日常 | ナノ
98日目(日曜日)

今日は週に一度のご褒美の日なんだけど、最近ようやく気がついた。あまり物欲がない私にとって「何かを買う」ことってそんなにご褒美じゃないわ。というわけで今日は趣向を変えて一人でピクニックに行ってみた。不思議なことに目的が定まると「せっかくなら美味しい弁当が食べたい!」っていう欲も出てきたので道すがらでちょっと高めのステーキ弁当を買って、デザートにミツバさんからもらった激辛煎餅を詰めていつもの河原に繰り出した。

この間まで暑くて死にそうだったのに今日は風が心地良かったし金木犀ぽい花の香りなんかも感じたりできて、ああもうすぐ秋なんだなぁとしみじみ思った。という話をさっき兄にしたら「那津の休日の過ごし方って余生みたいだよな」と言われてちょっとショックだった。

今日ほとんど人と話してないから書くことないな。強いて言えば、河原に寝転んでいたときに何回か犬が用を足してるのをみたんだけど、ついさっきしていた場所にお兄さんが寝転ぼうとしたからそれを止めた時にちょっとだけ話したぐらいだ。絶対に芝生濡れてるし、さすがにどんな人でも尿で濡れるのは嫌だろうと思って「あ!!そこはやめた方が!」と河原には似合わない大きな声で呼び止めて「若干引かれてしまった。慌てて「あの、そこさっき犬が用足してたので、座るならちょっと場所ずらした方が…」と付け足す。「ああ…犬が……用を…」と私の言葉を反芻したお兄さんはそこで言葉を区切り、少しの間を開けてから顔を背けて肩を揺らし始めた。眼帯のお兄さん(晋助さんって書くの申し訳ないからやっぱりこれでいこう)ばりのつぼの浅さだな。

お兄さんは「神妙な顔して何言うかと思うたら……。親切な嬢ちゃんじゃな」とほんの少しだけ場所をずらして腰掛けた。あの犬、結構長い間してたけどその程度のずらしで大丈夫か?と思って見ていたら「ああ、ちと足りんかったか」と遠い目をしながら呟いていたから多分濡れたんだろう。もう少し情報を付け足せばよかった。なんだか不憫に思えたのでお兄さんにはミツバさんからもらった煎餅を一袋プレゼントしておいた。

お兄さんは左目に大きい切り傷があって、眉間にはものすごく深い皺が刻まれていた。声をかけるのと同時にあれ?この人ってもしかしてカタギじゃないのではと思ったけど、うちのコンビニに来る人たちってぶっ飛んでる人ばかりで厄介さでいったら極道よりも上回っているような気がするから職業とか生まれとかがほとんど気にならなくなってしまった。人は見た目で判断したらいけない。コンビニで働きはじめて一番学んだことだ。だってあの人一度も犬や私に対して文句言わなかったし、舌打ちとかもしなかったもんな。器の大きい人なんだろう。何も知らないけど。

書くことないって思ったけど書き始めると意外と書けるもんだな。さ、寝よ。




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