ただの差し入れを愛妻弁当だとはしゃぐ治くん



今日はバレー部の大会。
試合に挑む男子バレー部に差し入れでおにぎりを作って持って来た。
でも人が多くてなかなか稲荷崎のみんなを見つけられない。
きょろきょろと周りを見ながら歩いていると…

「なまえちゃん、こっちやで」

ぐんっと誰かに腕を引かれたと思えば治くんだった。

「治くん!良かった、全然見つけられなくて困ってたんだ。他のみんなは?」
「ここにはおらん。俺だけ。それよりなんか美味そうなもん持っとるやろ?」

鼻をくんくんさせて、ごはん待ちのわんちゃんみたいな顔で見てくる治くん。
本当に食いしん坊さんだなぁってちょっと笑いながらトートバッグの中からおにぎりを出した。

「はい、どうぞ」
「!おにぎりや!なまえちゃんが作ったん!?」

治くんは目を輝かせて「ありがとお」と大喜び。

「愛妻弁当やぁ」
「え?」
「俺のために作ってくれたんやもんなぁ」
「えっと、ただの差し入れだよ?他のみんなの分もあるし…」
「はあ!?そんなんあかん!なまえちゃんのおにぎりは全部俺のや!俺が食う!」
「あの、気持ちは嬉しいけどそんなに食べたら動けなくなっちゃうからね…?」

眉根をぎゅっと寄せて不服そうに唇を尖らせて拗ねる治くんに苦笑い。
でもちょっと可愛いなって思ったり。
今度は治くんのだけ特別に大きいの作ってくるね。




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