頑張り屋さんな嫁を労る北くん



農家に嫁ぐのは大変なことだ。
ある程度覚悟はしていたのだが、実際に農作業をやってみると想像以上にハードだった。

「いたっ…」

手だって荒れるし、今も弱った皮膚が悲鳴をあげて、指が切れて血が滲み出てきてしまった。

「手、切れたんか?」
「ううん、これぐらい大丈夫だよ」
「無理したらあかん。作業は一旦中断や」

軍手を外した信介くんが、おいでと手を差し出してくる。

「手当てしたる」
「でも、ほんとに大したことないから…」
「その手で作業はさせられんよ。菌が入ったらどないするん?」

信介くんは私の手を引いて家まで戻ると、救急箱を持って来て指にマキロンをかけて消毒をしてくれた。
ちょっと痛いけど我慢だ。
でも痛いのを我慢してるのなんて信介くんにはお見通しで、その凛々しい眉を心配そうに下げてこちらを気遣ってくれる。

「痛いな、ごめんな」
「そんな、信介くんのせいじゃ…」

信介くんは消毒を終えた指に丁寧に絆創膏を貼ってくれると、その大きな手で私の手を包み込むように握ってくれた。

「なまえちゃんが頑張り屋さんなのは知っとる。でもつらい思いをさせたいわけちゃうねん。せやから、俺には甘えてほしい。俺はなまえちゃんの旦那なんやから」

信介くんの優しさに思わず泣きそうになって、きゅっと唇を噛んだ。
私は幸せ者だ。
この人のもとに嫁いで本当に良かった。




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