001/友達の友達から昇進するには



俺には好きな女の子がおる。
隣のクラスのみょうじなまえちゃん。
クラスは違っても顔を合わせれば話もするし、ライン交換もしとる仲やけど、でも今の俺のポジションは友達の友達。
なぜならなまえちゃんは…

「明日の映画、なんでお前も一緒なん…」
「俺も見たいやつやったからちょうどええと思って」
「はー…もうなんでなまえちゃんこんなやつOKしたん…」
「こんなやつってなんやねん。俺となまえはマブダチの仲やぞ」

そう、なまえちゃんは俺の片割れの親友なんや。
ほんまに意味わからん、あんなええ子がなんでこの人でなしとマブダチなん?
見た目やってツムと違って派手やないし、おとなしめの清楚系女子のなまえちゃんがツムとマブダチとか全然しっくりこぉへん。
この二人の関係性はリアルに世にも奇妙な物語すぎる。

「…なあ、ツムは明日何着ていくん」
「あん?別になんも考えとらんけど。出かける前のそん時の気分で決めるし」
「あっそ…」
「なんや、なまえがおるからって気にしとんの?あいつ人の服装とか気にするタイプちゃうから安心し。なんならスウェットで行っても平気やで〜。ま、俺はスウェットでは行かんけど」

人の気も知らんで適当なこと言うてわろてる片割れに軽く殺意。
スウェットとかなめとんのか、好きな女の子と出かけるのにそんなだるだるスタイルで行くわけないやろ。
いつもならそんな悩まへん服装もなまえちゃんがおるとなると何着てけばええんやってクローゼットの前でむっちゃ考えてまう。
だってデートやし(余計なのもおるけど)

ほんまはもっと早くに誘いたかったんやけど、なんせなまえちゃん相手やと「明日ヒマやったら一緒に出かけへん?」なんてライン送るのにも緊張してもうて、いつも送信できずにスマホを投げ出してまうねん。
今回の映画やって結局声掛けてくれはったのはなまえちゃんの方からやったし、俺男のくせして情けないわ…。
でも明日はなまえちゃんにちょっとでもかっこええとこ見せて、もっと仲良うなんねん…!

そんなこんなで翌日の日曜日。
待ち合わせ場所にはすでになまえちゃんがおって、俺らを待っとった。
それもこれもクソツムが家出る前にもたもたしとったせいで乗る予定やったバスを逃してもうたからや。
「ちょっとぐらい遅れても平気やって。いつものことやし、なんなら俺がなまえより先に待っとったことなんて一度もないで」って悪びれもなくヘラヘラしとったこのクソポンコツを俺がなまえちゃんの代わりに蹴り飛ばしといた。
ほんまにこいつありえへん、待ち合わせ時間には間に合うように行く努力をしろや。
それができへんならお前は人と待ち合わせをすんな。

「なまえちゃんほんまにごめん、あとでクレープ奢るわ」
「太っ腹やん。俺、チョコバナナ生クリームな」
「ふざけとんのか、自分で買え。つか、お前もなまえちゃんにちゃんと謝れや」
「治くん、気にしないで。わたしね、侑くんと遊ぶ時はいつも本を持ってきてるんだ。読んでたら時間なんてあっという間だし、だから待つのは全然大丈夫なの」
「お前ほんま本好きやんなー…って、いっだだだだ!」
「おい、クソ野郎。今すぐ土下座してなまえちゃんに詫びろや」
「ぐえっ…!ちょ、まっ…!めりこむ!コンクリにめりこむ!」

ツムの後頭部を俺のフル握力でわしづかんで土下座させた。
なまえちゃんは気にしてへん言うてたけど俺が気にするわ。
こんな人として終わっとるやつが自分の片割れなんて恥ずかしい。

それから遅れてもうたお詫びとして俺はクレープ、ツムはタピオカジュースをなまえちゃんに奢った。
一人で食べるのは申し訳ないからって、クレープもタピオカも半分ずつ俺らにくれはったなまえちゃんはほんまに優しすぎるええ子で、つくづくなんでツムなんかと仲良うしとるんやろって疑問に思う。

「そう言えば、なまえお前なんか顔いつもとちゃうな?」
「あ、うん。チークとリップ新しいの使ってみたの。変かな?」
「全然変じゃないで、かわええと思う」
「うわ、むっちゃナチュラルに口説くやん」
「うっさいわ」
「治くん、ありがとう。メイク変えるのっていつもちょっとドキドキするから、褒めてもらえて嬉しい」
「なんやそう言うことなら俺やって褒めたるわ。なまえちゃんかわええで〜、よっ日本一!」
「侑くんのはなんか違うんだよね」
「おい、俺にもありがとう嬉しいって言えや」
「そういうところだよ?」

あのツムとやんわりやけど言い合っとるなまえちゃんを見てたら、悔しいけどほんまにツムのマブダチなんやなって実感してもうた。




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