002/今日も画面ごしにきみを思う



「お、俺とっ…ライン交換してくださいっ…!」

放課後、自分のラインのQRコード画面を出したスマホをなまえちゃんの前に差し出して、深々と頭を下げた俺は一世一代の告白かってレベルで緊張しとった。
あかん、手ぇ震える、これ断られたらショックすぎてしばらく立ち直れへんで…。
嫌な汗が出てくるのを感じながら、ぎゅっと目を閉じて返事を待っとると、ぽこんってスマホが鳴った。

「侑くん、友達追加できたよ」
「へっ…!?」
「いまスタンプ送ったの私だから、登録よろしくお願いします」
「えっ、あっ…し、した!いま友達追加した…!」

にこりと笑って「それじゃ、また明日ね」って俺に小さく手を振りながら帰って行くなまえちゃんに俺もぽやぁっとした頭で手を振り返した。
ほんでもう一度スマホの画面を見て新しく追加されたなまえちゃんのラインを確認しては「っしゃあ!」と声に出してガッツポーズ。
なまえちゃんのライン!ゲットやで!

でもライン交換をして喜び浮かれたのもつかの間、その一週間後には俺はスマホを前にゲンドウポーズで深刻に思い悩んどった。
なぜなら、なまえちゃんとライン交換したっちゅうのに1回もメッセージを送れないまま今に至るからや。
向こうからライン来るわけでもなかったし、俺となまえちゃんのトーク画面はあの日送られたスタンプ一個のみ。

「サム、俺はどうしたらええんや…」
「普通に送ればええやん」
「普通てどんな…」
「今何しとんの?とか」
「そんなんストーカーみたいでキモイ思われそうやんか…!」
「はあ?じゃあ、なんかおもろいスタンプ送ってみるとか」
「どアホ!なまえちゃんにそんなしょうもないライン送ってええわけないやろ!」
「なんやねん、めんどくさ」

ダンッ!とリビングのテーブルを叩いてキレる俺と、のんきに目の前でアイスを食うてるサム。
こいつに相談した俺もアホやった。
食いもんのことばっか考えとるようなこんなやつに俺の繊細な恋心なんてわかるわけがなかったんや。

はあ〜〜〜…ってクソデカため息をついて、開きっぱなしのラインのトーク画面を見つめた。
頭の中は相変わらずなまえちゃんのことでいっぱいで、今頃何してはるんやろ…って思いを馳せる。
晩ご飯は何食べたんやろうか。
もうすぐお笑い番組やる時間やけどなまえちゃんも見たりするんやろうか。
それとも部屋で勉強とかしとんのかな。
あ、もしかしたら時間的にお風呂入っとる可能性も…。

「ツム、顔キショいで」
「っ…う、うっさいわ!こっち見んなや!」

つい入浴中のなまえちゃんを想像してもうた俺は煩悩にまみれた最低なやつやと思う。
途端に自己嫌悪に襲われて、ゴンッてテーブルに頭を落とした。
ほんで心の中でなまえちゃんに謝罪しとると、俺のスマホからぽこんって音が鳴ってハッと顔を上げる。
画面にはライン通知が一件。
その送り主は…

「き、キタァーーーッ!!」
「うおっ、急にデカい声出すなやビビるやろ」
「サム!なまえちゃんからライン来た!やばい、初ラインや…!」
「おお、よかったやん。なまえちゃんはなんて?」
「あ゛っ…!トーク画面開きっぱやったからそっこう既読つけてもうた…!あかんっ、これじゃこいつずっとスマホ見とるんかって思われる…!」
「実際そうやったやろ。で、なまえちゃんはなんて?」
「落ち着け俺、まずはたまたまスマホ見てたところやったってことを伝えて…それからなまえちゃんにちゃんと返事をするんや…絶対誤字ったらあかんで俺…」
「おいシカトすんなや」

サムの存在を完全にシャットアウトして、スマホを手に集中して文字を入力する。
ほんで文章がおかしくないか3回ぐらい確認してから送信した。
緊張と焦りで変な汗かいたわ…。
でもなまえちゃんとラインで話せた…むっちゃ嬉しい…!

「サム、このあとやるお笑い録画しといて」
「は?ここで見ればええやん。どこ行くん?」
「宿題やってくる」
「宿題!?えっ、あのツムが自発的に宿題やるとか天変地異の前触れやん、こわ…」
「おい失礼すぎやろ、俺をなんやと思ってんねん」

唖然としとるサムをリビングに放って、足早に部屋に向かった俺。
エナメルバッグの中からちょっとクシャッとなってもうてる英語のプリントを取り出した。
片手にはスマホ、画面はまだなまえちゃんとのトークが出とる。

『侑くん、こんばんは。英語の宿題、明日提出だけどもう終わってる?』
『なまえちゃん、こんばんは!今からやるとこやった!』

俺はなまえちゃんに嘘なんてつかへんで。
よしっ!と気合いを入れて、めちゃくちゃ久しぶりに勉強机と向き合った。




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