勇者の侑と魔王のお姉ちゃん@
※ドラ○エみたいな世界観で書き始めた宮姉のパラレルワールド
※厨二病が過ぎて恥ずかしくなったのでここに移しました…
ここまで長く険しい道のりだった。
目前に聳え立つ巨大な扉を見上げ、ぎゅっと拳に力を込める。
ついに辿り着いた魔王の城。
今日俺は魔王を倒し、旅を終える。
そして生まれ育った故郷に晴れ晴れと帰るのだ。
大きく息を吸い込み、俺は勢いよく城の扉を開けた。
「魔王!覚悟せぇ!勇者の侑様がお前を成敗しに来たで!」
城内に突入してすぐに目に飛び込んできたのは、中央部に鎮座している大きな椅子だった。
いかにも魔王が座っていそうな感じがするのに、なぜかそこにいたのは小柄な女の子。
「どちら様ですか?」
「えっ…?いやあの、魔王は…?」
「うん?魔王はわたしだよ?」
は…?
魔王はわたし…?
いや、いやいやいや…
「ふ、ふざけとるんか!?魔王って言うたらもっとこう、デカくて厳つい奴やろ!?」
「そう言われても、ほんまにわたしなんよ」
イメージと違ってごめんね?と言うて、眉尻を下げて謝ってきた魔王(仮)に俺は信じ難い気持ちでいっぱいになった。
ほんまに…?
ほんまにこの子が魔王なん…?
「嘘やろ…こんな女の子倒すために、俺は今まで死ぬ気でレベル上げしてきたんか…?」
がくりと思わずうなだれてしまった。
魔王に打ち勝つため、必死にここまで頑張ってきたというのに。
「あの、大丈夫?」
「っ!」
いつの間にか女の子が俺の目の前にいて、こちらの顔を覗き込んでいた。
驚いて身を仰け反らせながらも、改めてまじまじとその姿を凝視する。
頭から生えた二本の角、お尻にある悪魔の尻尾。
魔王とまでは言えないが魔族であることは間違いない。
「勇者の侑くん、だっけ?」
「そうやけど…」
「わたしはなまえです。よろしくね」
ふわっと花みたいに笑ったその顔がめちゃくちゃ可愛いかった。
魔王なのに…
いや、まだ信じてへんけど…
でもそこでハッとした。
もしかしたらこれは魔王の罠なんじゃないかって。
きっとこの可愛いらしい姿は魔術か何かで、俺にそう見せているだけなのかもしれない。
だとしたら、騙されるな。
俺は勇者なんや
一発かましたれ!
「よろしくするわけないやろ、このクソ魔王!俺の目は誤魔化せへんで!喰らえッ必殺奥義!!」
思い切り地を蹴り、上空に飛び上がった俺は剣を手に大きく振りかぶった。
城内が眩い閃光で白み、激しい音と共に広範囲に渡って床に大穴があく。
「この日のために修行を積んであみだした奥義や。喰らった奴は骨も残らんで」
勝負は一瞬だった。
俺は勇者としての使命を終えたのだ。
剣をおさめ、来た道を戻ろうと背を向ける。
だがその直後に背後で人が動く気配を感じ取り、驚いて振り返った。
「!?まだ生きてッ、」
「クソなんて汚い言葉使っちゃダメだよ」
俺は絶句した。
あの奥義をまともに喰らって、まさかのノーダメージ。
魔王の着ていた衣服はボロボロに破れてはいたが、その体は傷一つ負っていなかった。
「な、なんで平気なん…?」
「うん?だってわたし、魔王やもん」
ニコリと笑った魔王のなまえちゃんはやっぱり可愛いくて、ほんでその秘めたる強さにゾッとした。