同級生マネのお見舞いに来た広尾くん

※しばらく書けなかった時にリハビリで書いたもの



ふと目が覚めた。
ぼんやりする頭で、どうして寝てるんだっけ…?と考える。
汗ばんだ体、熱いのに寒気もあって、全身がだるい。

ああ、そうだ…

わたし、風邪引いて寝込んでたんだった…


「あ、起きた?」
「!?」


寝返りをうったら、わたしの顔を覗き込んでるマスクをつけた男の子が立ってて、ものすごく驚いた。
長めの前髪に隠れた左目。
同級生で同じバレー部の広尾くんだった。

どうして、広尾くんがここに…?


「みょうじが風邪で倒れたって聞いたから、バレー部の代表でお見舞いに来た。ちらっと顔見たら帰るつもりだったけど、みょうじのお母さんに買い物に出掛けるからって言われて留守番頼まれた」


え、ええ…

嘘でしょ、お母さん…

広尾くんになんてこと頼んでるの…

淡々と説明をしてくれた広尾くんに、わたしは猛烈に申し訳ない気持ちになった。
だから広尾くんに謝ろうとしたんだけど、それが喉に負担をかけたみたいで咳き込んでしまった。


「おい、大丈夫か?」


広尾くんが心配して、わたしの背中を撫でてくれる。
こんな姿を見せちゃって、情けないし恥ずかしいしで目に涙が滲む。
パジャマ姿でおでこに冷えピタを貼って、髪も寝癖がついてて、顔だってすっぴん。
これが他のバレー部の男の子だったら、きっとそこまでは気にしなかったと思う。

でも、今目の前にいるのはわたしが片思いしてる男の子なのだ。
これはもう大問題である。
恋する乙女としては、広尾くんにだけはこんな姿を見られたくなかったと言うのが正直な気持ちだった。

ああもう…

どうしてよりによって広尾くんが来ちゃったんだろう…


「水とってくるから、ちょっと待ってて」
「っ…」


そう言って広尾くんがベッドから離れていこうとする気配。
わたしはどういうわけか、思わず広尾くんの制服をギュッと掴んで引き止めていた。
この行動には自分でもびっくりしたし、広尾くんもびっくりした顔してる。


「どうした?」


広尾くんがベッドの端に腰を下ろした。
引き止めたのはわたしなんだから、何か言わなきゃって思うのに言葉が見つからない。

どう、しよう…

とりあえず、もぞもぞと上半身を起こしてみた。
ギョッとした広尾くんが「横になってた方が良い」って心配して言ってくれたけど、わたしは熱のせいもあってそれをぼんやり聞き流してた。
それから広尾くんの顔を見て、やっぱりカッコイイなぁ…って思う。
マスクもして前髪で片目も隠れちゃってて、見えてる顔のパーツなんて一部分なのにそう思えるんだから、恋愛フィルターはすごい。


「おい、みょうじ?お前、本当に寝た方が…」


ちゅっ


「!?!?なっ、なななっ…みょうじ!?」


これまでに、あの冷静な広尾くんが慌てふためいて取り乱した姿を見たことがあっただろうか。
ズサーッ!とベッドから飛び上がって離れて、耳を片手で押さえてる広尾くんの顔は真っ赤だった。
黒髪の隙間から剥き出しになってる形の良い耳に思わず唇を寄せて、ちゅっと可愛いらしいリップ音までつけてキスしてしまったわたしは、やっぱり相当熱にやられてたんだと思う。

だってほら、頭がくらくらして…


「あっ、おい…!みょうじ…!?」


ぽすんと枕に倒れて目を閉じたわたしは力尽きて、再び深い眠りについてしまったのだった。


「な、なんであんな可愛いことすんだよ……これで俺に襲われても、みょうじお前文句言えないからな…!?」




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