03



2年の教室に向かう途中で嫌なものを見てしまった。
俺の存在に気づいた尾白さんに「角名!この双子連れてったってくれ!」と叫ばれる。
これめんどくさいやつだから、正直そっちには行きたくない。

「嫌や!なまえちゃんと離れたない!」
「なまえちゃんと一緒がええ!俺らも3年になる!」
「来年になったら2人も3年生だよ…?」
「ちゃうねん!今なりたいんや!」
「なまえちゃんがおらんと意味ないねん!」
「お前ら、むちゃくちゃ言うてないでさっさと2年の教室行けや!」

どうやら双子が例のいとこのお姉さんから離れたくないと駄々をこねているようだ。
何をやってんのかは理解したけどやっぱりめんどくさいやつだった。
尾白さんのキレ具合を見るからに、だいぶ双子がここでしつこく粘ってるっぽい。

「…そのへんにしとけば?お姉さん困ってるよ」

本当はスルーしたかったけどここを通らないと2年の教室には行けないから、仕方がなく近づいて口を挟む。
困らせている自覚はあったようで、双子は揃って「うぐっ…」と声を詰まらせた。
ふと双子のいとこのお姉さんと目が合う。
どうもと小さく会釈をするとお姉さんもぺこりと頭を下げた。

「角名くん、ごめんね…迷惑かけちゃって…」
「ああ、いや…みょうじさんも大変ですね、これが身内だと」
「それどういう意味やねん」
「おい角名、俺はツムよりはマシやぞ」
「ああ!?」
「あのさ、新しいクラス確認する時間なくなるんだけど…」

結局、埒が明かない双子を俺が引きずって2年の教室に連れて行かなきゃなんなくて、朝練の無い朝だったのに無駄に疲れた。
しかも双子といると目立つからやなんだよな…。
今日なんてクラス替えだから、双子と同じクラスになったと喜んでいる女子達がここぞとばかりに話しかけにやってくるからうんざりする。

「双子何組やった!?」
「侑くんは2組やで!一緒のクラスやったのほんま嬉しい〜!」
「治くんは1組やってー!私おんなじや!」
「1組やと確か角名くんもおるやん!」

へえ、俺は治と同じクラスなんだ。
クラス替え発表の貼り紙を見る前に女子の騒ぎ声から情報が耳に入り込んできた。
ここはさっさと自分のクラスに行くのが正解だろうなと考えて、とりあえず同じクラスになったらしい治は連れて行くかと視線を横にずらしたら、女子に囲まれてる双子が絶対零度みたいなオーラ出しててぎょっとした。

「どいつもこいつも喧しいねん…」
「死ぬほどどうでもええわ…」

どうやら今の双子にはクラス替えの話題は地雷と化しているらしい。
このまま放っておくのもまずい気がして、とりあえずみょうじさんと一緒にいるであろう尾白さんに連絡を入れてみた。

「すみません、双子がやばそうなんでお姉さんからのフォローお願いします」

尾白さんに連絡を入れて間もなく、双子のスマホからLINEと思われる通知音が鳴る。
その相手はお姉さんだったようで、メッセージを確認した双子の顔がぱあっと温度を取り戻して明るくなった。

「なまえちゃんやー!俺らのこと大丈夫?って心配してくれとる!」
「なまえちゃんほんま優しいなぁ!てか、このスタンプめっちゃかわええ」
「フッフ、俺もなまえちゃんとおんなじスタンプもっとるで」
「はあ?なんなんそれ、ずるいやろ。俺もおんなじの買うわ」

あの双子を一瞬で鎮められるお姉さんすげぇなって思った。




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