02



あとから聞いた話なのだが、みょうじさんの家はパン屋らしい。
両親が経営するその店の手伝いを放課後はしているから、みょうじさんは部活には入っていないのだそうだ。

「家がパン屋とか羨ましいな、食い放題やん」

家から持ってきた弁当とはまた別に、購買で買った菓子パンを頬張る治の目はみょうじさんの方を見ていた。
同じ教室内だけど俺らのいるところからは離れた場所にみょうじさんは座っているから、たぶん治の声は聞こえていないと思う。

「ほんで、どのへんにあるて?そのパン屋」
「いや、そこまでは知らない」
「おい、そこ一番大事なとこやぞ」
「しょうがないじゃん、本人から聞いたわけじゃなくて周りで話してた女子の会話が耳に入っただけなんだからさ」

そんなに気になるなら聞いてくれば?と言えば、治は「うーん…」と唸った。
まあそうなるよな、と内心思いながらパックジュースのストローをくわえる。
みょうじさんはほとんど話したことのない女子生徒だ、いきなり「実家のパン屋どこにあんの?」なんて普通は聞けないだろう。
侑なら平気でやりそうだけど、俺と治はそうじゃない。

「…実家がパン屋ってことはさ、そこから学校に通ってるわけだから案外近場だったりして」
「言わてみればそやな。この辺にパン屋ないか調べてみるわ」

菓子パンを食べ終えた治がスマホをポケットから取り出して地図アプリを起動した。
どうやら稲荷崎高校近辺の店を調べようとしているらしい。
治は食いもののことになると途端に意欲的になる男なのだ。

「それっぽいの見つかった?」
「見つからへん、やっぱ店の名前ぐらいわからんとむずいか…」



※このあと、治と角名はヒロインの家のパン屋さんをつきとめて、部活終わりに客として来店します。
そこでお店の手伝いをしていたヒロインと顔をあわせて話をして、それから学校でも交流していく予定でした。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -