003



6時50分。
一般常識の基本とされている10分前には稲荷崎高校の体育館に到着した。
宮兄弟の爆走劇を目撃したこと以外は特に何事もなく辿り着けたことに、なまえは少しほっとしながら体育館の鉄の扉を静かに開ける。
だが扉を開けた先でドキリと緊張が走った。
すでに中で待機していた3年の北信介とばったり目が合ってしまったのだ。

「お、おはようございますっ…」

慌てて頭を下げて挨拶をすると、北は表情を動かすことなく「おはよう」と返してきた。
普通の挨拶であるはずなのに、なぜか背筋をピンと伸ばさずにはいられない圧を感じる。

「確かマネージャー志望のみょうじさんやな」
「は、はい…先日こちらに転入した、2年のみょうじなまえと申します…」
「そんなにかたくならんでもええよ。ある程度の礼儀は必要やとは思うけど、この合宿中は嫌でも体しんどくなるんやから、気持ちぐらいは気楽にしとき」

淡々と、でも気づかいの言葉をかけてくれた彼になまえは目を瞬かせた。
感情が顔に出にくいだけで実は心あたたかな人なのだろうか。
そんなことを考えていると後ろからガヤガヤと話し声が聞こえてきたため、はっとしたなまえは横にずれて入口を広く開けた。

「おはざーっす」
「今回も北が一番乗りやったな」
「あれ、双子来てないし」
「寝坊やな。合宿が楽しみで夜寝れなかったパターンやろ」
「小学生かっちゅーねん」

入口からぞろぞろと中に入ってきたバレー部員達。



※このあと、双子がやって来てヒロインの顔を見るなり「ああ!さっきの!」って絡んできます。
合宿を通して新しい環境に慣れないながらにもマネージャー業に真面目に取り組むヒロインは合宿後には正式にバレー部マネージャーになります。




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