01

※親が再婚して血の繋がらない姉弟になったお姉ちゃんと双子の設定も初期は考えてました
※今の宮姉よりも幼くて、双子の方が頼もしい感じ



家族だけれど、家族じゃない。
本当だけれど、本当じゃない。
正反対なのにどちらも正しくて、そんな不思議な関係で繋がっている家族がここにある。

「わあ、小さくて可愛い」

デパートの中に入っていたベビー用品店の前でふと足を止めて口もとを緩めて笑ったのは宮なまえだった。
並べられている靴下や帽子はどれも本当に小さくて、しかも可愛いらしいデザインばかりだ。

「ほんまにちっこくてなまえちゃんみたいやな」

なまえの隣で同じようにベビー服を見下ろしたのは宮治で、数年前に親が再婚したのを機になまえと姉弟の関係になった義理の弟である。
学年的には同じ高校2年生なのだが、数ヶ月違いの誕生日の差でなまえの方がほんの少しだけお姉さんなのだ。
その数ヶ月分だけお姉さんであるなまえは、むっとした顔で自分よりも遥かに背の高い治を見上げた。

「わたしは赤ちゃんじゃないよ」
「赤ちゃんとは言うてへんよ。ちっこいところが似てるってだけや」
「こんなに小さくないよ」
「俺から見たらおんなじようなもんやし」
「それは治くんが大きすぎるからだよ」

なまえはさらにむむっとしながら、先ほどからずっと治に繋がれている自分の手へと視線を落とした。
しっかりと繋がれた手と手は、治の方が大きくてなまえの手はすっぽり覆われてしまうほどだった。
そもそも手を繋いでいるのだって、はぐれたら大変だからと治が言い出したからで、これもひどく子ども扱いされているように感じて仕方がない。
やはり彼にとって自分は赤ん坊同然なのではないかと思ってしまう。

「ええやん、ちっこい方がかわええで?」
「赤ちゃんみたいに…?」
「せやから、赤ちゃんとは思ってへんて」
「………」

あまり納得はしてもらえていないなまえの様子に、機嫌直しぃやとその顔を治が覗き込もうとした瞬間、どこからか「あかーーーん!」と喧しい声が聞こえてきた。
「うっさ…」と眉根を寄せた治が下げかけた頭の位置を元の高さに戻す。
その視線の先には猛ダッシュでこちらに向かってくる治と同じ顔をした双子の片割れであるもう1人の義弟の宮侑がいた。

「なぁにをしとんねん!新婚みたいな空気出しよって!許さへんぞ!」

唐突にキレ始めた侑に治は「はぁ?」と顔をしかめ、なまえは戸惑い気味に小首を傾げた。
どうやら侑の目には、治となまえが仲良くベビー用品を眺めている新婚夫婦の図に見えたらしい。
そしてそれが気に食わなくて荒立っているようだ。

「しかもその手!ほんまなんやねん!俺が便所に行ってる間にやることちゃうやろ!せこすぎるわ!」
「ツム、お前ちゃんと手ぇ洗ったんやろな?」
「あ゛あ!?きっちり30秒かけて洗ったわボケ!」

治にメンチを切りながらも、侑はなまえの空いている方の手をすかさず掴んでいた。
ちゃんと洗ったと言うのは本当のことで、侑の手からはハンドソープの香りがしている。
しかしなまえはそんなことよりも、両サイドから手を繋がれたこの図はいったいなんだろうかと困惑していた。
しかもこの状態のまま歩きだして移動しようとしているから尚更である。

「あの、手は繋いでなくちゃダメなものなの…?」
「はぐれへんためやって」
「なまえちゃん、ちっこいからはぐれたら迷子になってまうで?」
「侑くんまでそんなこと言う…。わたしそんなに子どもじゃないよ…」

だがそうは言っても、ふと店のガラスにうつった長身の男2人に挟まれて手を繋がれている自分の姿を見たら、やはり幼い子どものように思えてしまってしゅんと落ち込んでしまった。
だから今日からいっぱい牛乳を飲もうと思ったのだが「今さら伸びひんとちゃう?」「牛乳だけで背は伸びひんのやで」と言われてしまって、悔しいしなんだか悲しくなったので双子のかたい腹をポコポコと叩いたのだった。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -