繋がり始める輪



ポコンと机の上に置いてあるなまえ姉のスマホにライン通知。
別に見る気は無かった。
無かったのだが、その後も立て続けにポコポコとライン通知が鳴り止まないため、さすがに気になってしまったのだ。

誰だよ、なまえ姉にしつこくライン送ってるやつ…

「………」

なまえ姉のスマホ画面を上から覗き込んだ瞬間、ピシッと己の身が硬直したのがわかった。

宮 治
『今度いつ差し入れ持って来てくれますか』
宮 侑
『なまえちゃん!また勉強教えて!』
宮 治
『次は米食いたいです』
宮 侑
『英語がやばいねん お願いや〜』
宮 治
『パンでも大丈夫です 好きです』
宮 侑
『あとほんまにデートしよな?どこ行く?』

言いたいことは山ほどあるが、まず聞きたい。

お前らなんでなまえ姉のライン知ってんの???

「あれ?倫くん、どうしたの?」
「なまえ姉、これ何…」

風呂上がりのなまえ姉が不思議そうな顔で首を傾げて俺のそばに来る。
そして自分のスマホを見ると「あ、双子くんだ」となんのことでもないように笑った。

「なんで双子とラインしてんの…?」
「?ライン交換したから」
「いつしたの…」
「この間ね、治くんが3年生の教室まで来てくれて、少しお話してたら流れで交換することになったの。侑くんは治くんから私のライン聞いたって言ってたよ」
「………」

あの野郎…

俺は怒りでわなわなと震えた。
やたらとなまえ姉の連絡先を知りたがっていた侑にばかり警戒していたせいで、治の方は油断していた。
まさか治が単独で3年の教室に乗り込むなんて大胆な行動に出ていたとは…。

「お米かぁ、それならおにぎりが良いかな?」
「いいよ持ってこなくて。なまえ姉が治のためにそこまでする必要ない。あと侑のラインは無視して」
「でも赤点だと部活出られなくなっちゃうんだよね?」
「それは勉強してないアイツの責任。ほっといていいよ」

そう言っても、うーん…と考え込みながら俺とスマホを交互に見るなまえ姉。
なまえ姉は優しい上に真面目でちゃんとしてる人だから、きっと返信を無視するなんてことは性格上できないと思う。
そんなことはわかっているのだが、それでもやっぱり嫌なものは嫌なのだ。
なまえ姉を双子にはとられたくない。

「倫くん?」

なまえ姉のスマホを裏返して、画面が見えないように伏せる。
それからなまえ姉の手を掴んで、ぎゅっと握った。

「なまえ姉は俺のお姉ちゃんでしょ」
「うん、そうだね」
「じゃあ、双子の面倒なんて見ないでよ」
「えっ?」
「なまえ姉の弟は俺だし…」

眉根を寄せて、少しだけ口を尖らせながら拗ねる。
なまえ姉はそんな俺を見上げて目を丸くした。
でもすぐにその目は柔らかく微笑んで、俺の手を握り返してくれた。

「倫くん、そんな顔しないで?」
「………」
「お姉ちゃんの一番はいつだって倫くんだよ」
「…ほんとに?」
「うん、ほんとに」
「じゃあ、俺が双子のラインブロックしてって言ったら?」
「それはちょっと悩んじゃうけど…でも倫くんが望むならそうするよ」

困った顔で優しく笑うなまえ姉に俺もさすがに良心が傷んで、「嘘だよ、今のは冗談。ごめんね」と謝った。
なまえ姉が双子とラインで繋がってしまったのは正直面白くないけれど、でもだからと言って俺のわがままでなまえ姉を困らせたいわけじゃない。

「双子に変なこと言われたらすぐ言ってね」
「うん、ありがとう」

俺も大人にならないと…

でもやっぱり双子がムカつくから、明日会ったら一発ずつ肩パンしてやろうと思う。



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