お姉ちゃんとはじまる朝



「倫くん、朝だよ」

寝起きでぼうっとしてる頭でゆっくりまばたきを繰り返した。
今日も優しく俺の体をゆすって、柔らかく声をかけて起こしてくれたなまえ姉が弟の俺の顔を覗きこみながら微笑んでる。
早起きは好きじゃないけど、なまえ姉に起こしてもらえる朝は好きだ。
ふわふわして、なんか気持ち良くて、幸せを感じるから。

「なまえ姉、おはよ…」
「うん、おはよう。朝ごはんできてるから、倫くんがお顔洗ったら一緒に食べようね」

スンと鼻を鳴らすと味噌汁の匂いがした。
あ、今日はパンじゃなくて白飯なんだなって察する。
トーストとベーコンだってもちろん良いけど、味噌汁と白飯のある和の朝食もすごく良い。
俺さ、なまえ姉の作る味噌汁けっこう好きなんだよね。
飲むとほっとするし、やっぱり幸せだなって感じるから。

ベッドの上で上半身起こして、ぐっと体を伸ばすとなまえ姉がにこにこ顔で俺の頭を撫でてきた。
別に撫でられるのはこれがはじめてじゃないし、嫌いじゃないけど、不思議に思ってなまえ姉の顔を見る。
俺がちゃんと起きたことを褒めてくれてんのかな。
でもそれなら「倫くん、えらいえらい」ってなまえ姉なら言ってきそうなんだけど…。

「お姉ちゃん、ご飯よそってくるから倫くんも終わったら来てね」

俺の髪を優しく撫でつけるようにして、それから部屋を出て行ったなまえ姉。
俺もベッドからおりて、ハンガーにかけてある制服とアイロンのかかったワイシャツを片手に部屋を出た。
洗面所で顔を洗って、タオルで水を拭いながらふと鏡にうつる自分に思わず「げっ」と声をもらす。
まじか、めちゃくちゃ寝癖ついてんじゃん…。
頭部の左側が暴風でも受けたのかってぐらいに逆立ってたから、でかいため息をつきながら髪を濡らしてドライヤーをあてた。

「あ、髪なおってる」
「なまえ姉、寝癖ついてるなら教えてよ…」

寝癖をちゃんとなおして、制服にも着替えてからなまえ姉のところに行くと、うまそうな朝食がテーブルの上に準備されていた。
イスに座った俺の前に味噌汁のおわんを置いてくれたなまえ姉に寝癖のことを言うと、やっぱりにこにこ笑いながら「可愛いかったよ」って返されて、そういうことじゃないんだけど…って気持ちになる。
さっき俺の頭撫でてにこにこしてたのも、寝癖が原因だったのだとわかってしまえばちょっと複雑だった。

それから、お互い向き合う形でいただきますをして朝食を食べはじめた俺ら。
愛知の実家から送られてきた漬物と白飯を口の中で咀嚼して、味噌汁をズズっとすする。
目の前で同じように食べてるなまえ姉の顔を見ながら、俺はあれ?と目を丸くした。

「なまえ姉、リップの色変えたんだ?」
「わあ、倫くんよくわかったね。前のとそんなに色変えてないのに」
「ああ、うん。そりゃまあ、なまえ姉の顔はよく見てるし」
「ふふ、そっか。私たち小さい頃からずっと一緒にいるもんね」

姉弟だもんねってふわりと笑うなまえ姉の唇は桜貝みたいな淡いピンク色だった。
確かに前に使ってた色もこういう感じだったし、普通は言われなきゃ気づかないレベル。
なまえ姉はたぶん、別に新しいリップにしたからと言って気づいてほしいとか褒めてほしいとか、そんなことは考えてなかったと思うんだけど、でもこういう時こそ他のやつらと俺は違うよってアピールしとかないと。

「可愛いね、その色も似合ってる」

俺の褒め言葉にきょとんと目を丸くしたなまえ姉だったけど、すぐにそのほっぺもほんのりピンク色に染めてはにかんだ。
ありがとうって嬉しそうに笑う俺の姉ちゃんが今日も可愛いなって思う。

「ねえ、今日の昼休み一緒に飯食おうよ」
「うん、いいよ。じゃあ、お昼は倫くんの教室に行くね」
「待った、それはダメ。俺がなまえ姉の教室まで迎えに行くから、そしたら中庭に移動しよ?」
「え?でも中庭に行くならわざわざ倫くんが上の階に来るより、わたしが下の階に行った方が手間じゃないと思うけど…」
「いいよ、全然手間じゃない。とにかく俺が行くから、なまえ姉は教室で待ってて」

絶対待っててよ?と念押しすると、なまえ姉は不思議そうに首を傾げながらも頷いてくれた。
あの双子もいる2年のフロアになまえ姉を来させるわけにはいかない。
ただでさえ日頃から「角名の姉ちゃん見せろや、写真とかあるんやろ」ってしつこいやつらだし…。

「なまえ姉のことは俺が守るから」
「うん、ありがとう…?」




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