これも恐らく放課後デート



たまにバレー部の練習も無くて姉ちゃんのバイトも無い日が被る放課後がある。
そんな日は姉ちゃんと一緒に帰りながらどっかの店に寄ったりするんやけど、今日は片割れのツムは不在やった。
なんでも、成績のことで担任に呼び出しを食らったらしい。
今頃職員室におるであろう哀れなツム。
俺もそんな勉強できる方やないけど、最近は姉ちゃん見習って前よりかは真面目に授業受けとるし、赤点とることも少くなってきた(まあギリギリでやけど…)
せやから俺はツムみたいなことにはならずに、こうして姉ちゃんと放課後デートを満喫できとるってわけや。

「姉ちゃん、スタバの新作飲まへん?」

恋人みたいに姉ちゃんと手を繋いで駅前を歩いとった時。
目に止まったスタバの看板に、ついこの間から販売開始となった新作メニューが頭の中に浮かんだ。
宣伝で見た時からうまそうやなぁって思っとったやつがあんねん。
姉ちゃんは甘いもんが好きな方やから、俺の誘いにも笑顔で頷いてくれはった。

ほんじゃ行こかって、姉ちゃんの手を引いて店の中に入ろうとしたところで「あ、北くん」と姉ちゃんの口からぎょっとする名前が出てきて思わず足が止まる。
姉ちゃんが手を小さく振っとる方をぎこちない動きで見れば、スタバの前を歩いてやって来る北さんが確かにおった。

「北さんがなんでこないなところに…」
「なんや、俺がおったら悪いんか?」
「い、いいえ…」
「北くんは本屋さんに行ってたん?」
「おん、欲しい参考書があってな。宮さんはここでなんか飲むん?」
「うん、新しいのが出とるからそれを頼もうと思って。北くんはもう飲んだ?」
「いや、飲んでへん。そもそもこの、スターバックスやったか?利用したことあらへんし」
「えっ!?北さん、スタバ行ったことないんスか!?」

俺は驚いて北さんの顔をバッと見た。
今時、スタバに行ったことあらへん高校生なんておるんか…。
いやでも、北さんがスタバ利用しとるイメージは無いか…。

「ねえ北くん、このあとまだ時間ある?」
「用はもう済ませとるし、あとは家に帰るだけやけど」
「じゃあ、スタバ体験してみない?」
「はっ!?姉ちゃん!?」

今度は別の意味でぎょっとした俺。
北さんも驚いとって、少しだけ目を見開いとった。
そんな中でも姉ちゃんだけは相変わらずにこにこしとって「はじめてでもなんにも怖いことあらへんよ」なんて言うとる。
姉ちゃんがそんなやからか、北さんは少し考えるような素振りを見せたあと「ほんなら、ご一緒させてもらうわ」と姉ちゃんの誘いを飲んだんや。
いや、なんかもう想定外の展開すぎてついていけへん…。
俺と姉ちゃんと北さんでスタバて、どういう状況やねん…。

「すんません、チョコレート・オン・ザ・チョコレート・フラペチーノお願いします」

スタバ初体験の北さんがメニュー表をじっと見とる横で姉ちゃんが丁寧に説明しとるのを俺は横目にチラチラ見ながら、とりあえず店員に新作のやつを頼んだ。

「治の今のはなんや?呪文か?」
「いや、そういう名前のやつなんで…。今回はカスタムしてへんし、わりと普通やったと思いますけど」

俺がそう返せば「贅沢な名前やな」って北さんは言った。
あんたは湯婆婆か。
でもそんなことは北さんには言えへんから、心の中でつっこむだけにしておく。

「宮さんは何を頼むん?」
「わたしはね、このメルティ・生チョコレート・フラペチーノにしようかなって思っとるんよ。北くんはどれにするか決まった?」
「俺は宮さんの隣にあるやつにするわ」

北さんがメニューを指さして選んだのはメルティ・生チョコレート・モカやった。
姉ちゃんと北さんが店員に注文しとる間に、先に頼んだ俺のやつは出来たようで別の店員からそれを受けとる。
その名の通り、チョコレートフラペチーノの上にブラックココアビスケットやキューブチョコなんかが乗ってて、まさにチョコづくしや。
店内の空いとる席を人数分確保して、新作に舌づつみを打ちながら二人が来るのを待った。

ほんで数分後、俺のところにやって来て席に座った姉ちゃんと北さん。
姉ちゃんのは生チョコソースがかかったホイップクリームの上にハート形シュガーがトッピングされとって可愛いらしかったし、北さんのはミルクを加えたエスプレッソにこれまた生チョコソースとキューブチョコが乗ってて、それが時間と共に溶けていくのは見ててうまそうやなって思った。

「北さんて、甘いもんいける口なんスね」
「ものにもよるけどな。でもこれはうまいと思うわ」
「よかった、また一緒に来れたらええね」

そう言って優しく笑う姉ちゃんに俺はちょっと顔を引きつらせてしもたけど、瞳を細めて笑ってはる北さんのレアな表情に「まあ、たまになら…」とひっそり思うのやった。




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