星空に魔法をかけましょう



冬の空気は澄んどって、星がよう見えるらしい。
星に興味は今まで持ったことあらへんから、そう言われてもピンとこんかった。
せやから、じゃあ1回見に行こかって話になって、俺となまえちゃんとサムで冬の夜に外に出てきたんやけど、防寒しとってもやっぱり寒いもんは寒かった。

「さむっ!」
「なんや、呼んだか?」
「呼んでへんわ!サムやなくて寒いの方のさむや!」

わかっとるくせにアホなボケかましてきよった片割れに軽くキレた。
ほんでそばにおったなまえちゃんに後ろから抱きついて少しでも寒さをしのがせてもらう
俺の腕の中におさまるこのサイズ感がたまらなくかわええ。

「なまえちゃん〜、サムが全然おもんないこと言うから凍死しそうや〜」
「ああ゛?お前のデレデレのきっしょい顔よりおもろいしマシやわ」
「はあ?お前やってなまえちゃんの作ったメシ食うてるとき、おんなじような顔しとるで」
「アホ言え、俺はそこまでひどない。もっと男前や」
「男前度なら俺の方が上やろ!」

ガシガシと互いの足を横蹴りしながら「「どっちの方が男前やと思う!?」」ってなまえちゃんに聞いてみた。
双子やからこんな時までタイミングどんぴしゃでほんま嫌になる。
でもなまえちゃんが俺とサムの顔を見上げて「ふたりともかっこいいよ、お姉ちゃんの自慢の弟やもん」って笑って言うてくれたから、途端に俺らは揃ってデレた顔になった。
自慢の弟とか嬉しすぎるやろ!

「なまえちゃんも俺らの自慢のお姉ちゃんやで」
「俺らの一番はなんてったって姉ちゃんや」

サムと一緒になってなまえちゃんをぎゅうってハグすると、なまえちゃんは嬉しそうに「ありがとう」ってまた笑とった。

「この先を行くとね、街灯が少なくなって星が見えやすくなるんよ。もうちょっと歩くから、あったかい飲み物でも買って行こっか」
「せやったら、甘いやつ飲みたい気分やからココアにするわ」
「俺はコンポタ飲みたい」
「じゃあ、わたしはミルクティーにしようかな」

通り道にあった自販機に小銭を投入したなまえちゃんは当たり前みたいに俺らの分まで買ってくれはった。
なまえちゃんから受けとった飲み物を手に持つと、冷えきっとった部分がじんわりあったかくなってなんかほっとする。
それから3人で並んでたわいのない会話をしながら夜道を歩いた。

だんだんとあたりが静かになって、街灯もぽつんぽつんと間をあけて立っとる程度になってくると、足もとが暗くて下ばっかに意識をとられる。
そうやって気をつけて歩いとった時やった。
くいっと上着の袖を引っ張られる感覚に視線を持ち上げる。

「上、見てみて」

囁くようななまえちゃんの声に導かれて空へと目を向ける。
そうしたら、視界いっぱいに宝石箱をひっくり返したような星空が広がっとって、俺は目を見開いて思わず感嘆の声をもらした。
すぐそばでサムもおんなじような反応しとるのがわかる。

「やば、むっちゃ綺麗やな…」
「星ってこんな見えるもんなんか、天然のプラネタリウムやん…」

キラキラと輝く星を見上げながら吐いた息は白い。
いつもなら寒くてすぐにでも家に帰りたくなる季節やから、今まで空なんて見上げようとも思わんかった。
でもこんなに星が出とることを知ってまうと、もったいないことしてたなってちょっと思う。

「よかった、2人にも見せてあげたいなって前から思ってたんよ」
「なまえちゃんってそんな前から星見とったん?」
「うん、天文に詳しいわけじゃないんやけど星を見るのは好きやからつい見ちゃうの。たまにね、流れ星も見えるときがあるんだよ?」
「姉ちゃんすごいな。俺、流れ星とか見たことあらへん」
「流れ星ええなぁ。なんやっけ、3回願いごとすると叶うんやっけ?なまえちゃんも願いごととかするん?」

俺やったらバレーのことやし、サムやったら飯のこととか願うんやろなって思う。
でもなまえちゃんはなんやろ?
なまえちゃんならこれって言うもんがパッと出てこんくて、俺は首を傾げる。
そしたら、なまえちゃんはふわりと笑ってまた星空を見上げた。

「ツムくんとサムくんの夢が叶いますようにって、お願いするんよ。2人の夢がお姉ちゃんの夢やから」

そう言ったなまえちゃんの綺麗な横顔を見て、思わず息をのむ。
ほんで鼻の奥がツンと痛くなった。
これは寒さのせいやないってわかっとる。

「姉ちゃん、俺ら絶対叶えるから安心してや。なあ、ツム?」
「おん、当たり前やん。俺らの夢がなまえちゃんの夢なら、絶対叶えたるわ」

なまえちゃんならこれってもんはあった。
それは俺ら“弟“のことやった。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -