宮姉弟のつかの間の天下



オカンとオトンが2泊3日で旅行に出かけた。
この家で俺とツムと姉ちゃんで過ごす約3日間。
親がおらんってことは、大概のことは何をやっても怒られへんってことや。
宿題せずにゲームしてテレビばっか見とっても、お菓子をぎょうさん広げて食うても、夜更かしだって堂々とやってええねん。

「なまえちゃん、ただいまー」
「姉ちゃん、ただいま。DVD借りてきたで」
「おかえりなさい。寒い中、行ってきてくれてありがとうね。2人が見たがってたのはあったん?」
「ちゃんとあったで!あとなまえちゃんの好きなのも借りてきたから一緒に見よなぁ」

暖房がきいたリビングで上着を脱いでマフラーを外すと、ピンポーンとインターホンが鳴った。
時刻は夜7時過ぎ、こんな時間に誰や。
不審に思いながら首を傾げとると、なまえちゃんが財布を手に俺らに向かってにこりと笑った。

「たまにはいいかなぁと思ってピザを頼んだんよ」
「「ピザ!?」」

俺とツムは顔を見合わて、わっしょーい!とハイタッチした。
宅配ピザ食いながら家で映画見るとかめっちゃええ。
ほんで玄関先でどでかいピザを受け取って戻ってきた姉ちゃんはそれを俺に託すと、キッチンに行ってそこから大袋のポップコーンと1.5リットルのコーラをにこにこしながら持って来た。
それを見た俺とツムはさらにテンションを上げて、わーっと子どもみたいに喜ぶ。
さすが姉ちゃんや!

「DVDセットしたで!」
「ピザもポップコーンも開けたし、皿の準備もオッケーや!」
「ツムくん、サムくん。コーラ注いだから、座って乾杯しよ」
「俺、姉ちゃんの隣!」
「俺もなまえちゃんの隣がええ!」

姉ちゃんを真ん中にして両サイドからサンドするようにソファーに座ったら、自分のグラスを各々持って「かんぱーい!」ってカチャンとグラスをぶつけ合った。
口に含んだ瞬間に広がるコーラの甘みと香り、喉を刺激する強めの炭酸がたまらへん。
アルコールなんか入ってへんのに、めっちゃ気分がええ。

「ほんじゃ、スタートするでー」
「あ、これって前に見た映画の続きなん?」
「そうやで。今回のはスパイダーマンとか出てくんねん」
「アイアンマンもええけど、やっぱスパイダーマンかっこええよなぁ」

少し前からアメコミヒーローにハマっとる俺とツムは、アイアンマンをはじめとするヒーロー達がバチバチに大乱闘を繰り広げるこのシリーズのDVDを定期的に借りてきては見とるんや。
姉ちゃんも一緒に見てくれることが多いから、今回のもきっと楽しんで見てくれるんやないかと思ってこれを選んだ。

チーズがとろけとるピザに舌づつみを打ちながら、序盤から映画の内容に引き込まれる。
時には笑えるシーンや胸にじんとくるシーンがあって、この映画の醍醐味でもあるド派手なアクションはやっぱり見応えがあって興奮する。

「うお、ウィンターソルジャーかっこええな…!」
「ほんま、めっちゃかっこええな…!」

ほんでクライマックスの方はピザを食う手も思わず止まって、真剣に見入っとった。
物語の深さやそれぞれのキャラ達が抱く思いに、心がぐっと詰まるような熱が生まれて、エンドロールが流れとる間はなんとも言えない感慨深い気持ちやった。
姉ちゃん、ちょっと泣いとったし。

「そう言えば、なまえちゃんってどのヒーローが好きとかあるん?女子の憧れやとブラック・ウィドウとか?」
「女子ならワンダってこともあるやろ」
「うーん、そうやね…ヒーローじゃないんやけど、わたしはロキがちょっと好きかもしれへん」
「ええっ!?なんでロキなん!?」
「嘘やろ、あいつええとこないで!?」
「うん、悪いことしてたのはわかっとるんやけどね、でもわたしお姉ちゃんやからどうしても弟って設定に弱いんよ」

困ったように微笑んだ姉ちゃんの顔を見て、なんか妙に納得してもうた自分がおった。
姉ちゃんはやっぱりどこまでいっても姉ちゃんなんやな。
そういうとこも好きやなぁって思う。

このあと、続けて姉ちゃんの好きな美女と野獣も見たんやけど久々にちゃんと見たらめっちゃ良くて、心が洗われるようやった。
ツムはなんか知らんけど「お幸せに…!」言うて最後ボロボロ泣いとった。

「なまえちゃんにあの黄色のドレス着てほしい」
「姉ちゃんがベルなら俺、野獣になってもええわ」
「は?お前が野獣になったら俺どうすんねん」
「ガストンでええやん」
「ぜっっったい嫌やわ!」

こうして宮家の夜はふけていって、結局この日は夜遅くまで食って騒いで、気づいたらリビングで寝落ちとった。
起きた時には毛布がかかってて、たぶん隣で寝とる姉ちゃんが俺らにかけてくれたんやと思う。
俺は姉ちゃんに擦り寄って、そのまま二度寝することにした。




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