主将から見た双子のお姉ちゃん



宮侑と宮治。
この双子に出会うよりも前に、俺はあいつらの姉である宮なまえのことを知っとった。
別に特別な理由があっての話やない。
ただ1年の時に、たまたま同じクラスやったってだけのことや。

「ごめんね、北くん。もう部活の時間やのに…」
「なんで宮さんが謝るん?委員会に入っとるんやから、その仕事をするのは当たり前のことやろ」

放課後の教室で、プリントを束ねとった宮さんが眉尻を下げて謝ってきた。
束ねられたプリントを受け取り、角にホチキスをとめながら俺は首を傾げる。

前は同じクラスやったけど、宮さんとは2年・3年時は別のクラスやった。
でも今年は入った委員会が偶然にもかぶっとったようで、委員会の仕事がある時にはこうして顔を合わせて話をしたりしとる。

「北くんは真面目やね」
「普通のことやと思うけどな」
「でも部活やっとる人はそっちを優先することが多いよ」
「それは部活を理由に周りに甘えとるだけや。どんなことでも引き受けたからにはちゃんとやるのがスジってもんやろ」

俺がそう返せば、宮さんはまた新たに別のプリントを束ねて「やっぱり真面目やね」って小さく笑った。
1年の時からそうやったけど、宮さんはきゃっきゃっとはしゃぐようなタイプの女子やない。
落ち着いとると言うか、にこにこしながら周りの様子を見守っとる静かな人や。
最初のころはそれが妙に大人びた振る舞いのように見えて、しかもどことなく母のような包容力さえも漂わせとるから、彼女は何者なんやろうかと不思議に思っとった。
でも今は、あの双子を弟に持つからこそのこの落ち着きようかと納得しとる。

「まとめておくプリントはこれで最後やね。あとは今学期の活動目標を書いてと…」

紙面にシャーペンで活動目標を記入する宮さんの手元に、俺もつられるように視線を落とす。
バランスのいい読みやすい字、でも少しだけ丸みを帯びとる女の子らしい字。
でもなんやろうか、この既視感。
俺はこれにえらく似とる字をどこかで見たような気がする。
しかも恐らくはつい最近。

「………」
「よし、おしまい。…あれ、北くんどうしたん?わたしが書いたとこ、どこか間違っとる?」
「いや、間違ってへんよ」

俺が首を横に振れば、宮さんは不思議そうに首を傾げた。
ほんでふと思い出す、この字を見たのは部活中の時のことやと。

「侑と治のタオル」
「え?」
「あいつらのタオルに書いてある名前、あれ宮さんが書いた字やったんやな」

少し前に、部活に双子が色もメーカーも全く同じタオルを持ってきよったことがあった。
でもあいつらはどっちがどっちのもんなのか互いにわかっとるようで、悩むことなく自分のタオルを手にしとった。
俺はそれを見て、なんで間違うことなく使いわけられるのか疑問に思っとったんやけど、よく見たらタオルの端に油性ペンで「侑」「治」と名前が書かれとったんや。

「うん、そうなんよ。双子やから同じものを気に入ることが多くてね、だから間違えないように名前を書くようにしとるの」
「いつも宮さんが書いとるん?」
「そうやね。教科書とかノートにも書いてってお願いされるから、学年が変わる時なんかはちょっと大変やけど」
「なんやそれ、子どもか。そんなん自分で書けるやろ」

姉ちゃんに甘えすぎやって俺が眉根をよせれば、宮さんは少しだけ困ったような顔をしながらも微笑んどった。
その目元は優しげで慈愛に満ちとって、やはり彼女からは母のような愛情深さを感じる。
ああ、これはほんまに弟のことが可愛いくてしゃあないってやつやな。

それから委員会の仕事を終えて、これから帰宅する宮さんを校門まで見送ってから俺は部活へ向かった。
練習着に着替えて体育館の中に入れば、チームメイトが声をかけてくる。
その中にはあの双子もおって、俺の顔を見るなり背筋を伸ばして「北さん、ちわっす!」と挨拶を受けた。

「侑、治。お前らは幸せもんやな」
「えっ…?」
「急にどないしたんです…?」
「姉ちゃんにあんま面倒かけるんやないで」

そう告げて、監督と話をするためにその場を離れると後ろの方で「なあ、今のなんなん…?」「いや、俺にもわからん…」と困惑しとる双子の声が聞こえてきた。




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