どこにだってついて行きたい



「なまえちゃん、それ俺持つわ」

近所のスーパーでオカンが買い忘れたと言うみりんを買って、持参したエコバッグにそれを入れるなまえちゃんに向かって俺は手を差し出した。

「1本だけやから、これぐらい大丈夫だよ」
「あかん。なまえちゃんのほそっこい腕に箸より重たいもんなんて持たせらへん」

首を横にふってその手からエコバッグを奪えば、なまえちゃんは困ったような顔をして、そんなにか弱くないのにと肩をすくめて笑った。
もちろん俺やって大げさなこと言うてる自覚はあるけど、でも俺にとってなまえちゃんは大事な大事なお姫さんやし、大げさになってまうのはしゃあないねん。

「それにしても、オカンもこの時間になまえちゃん1人で買いものに行かせるとか何考えてんねん。外暗いし、危ないやろ」
「タイミングが悪かったんよ。サムくんはお風呂入っとるし、ツムくんも練習しんどかったって言うとったから頼みづらかったんやないかな」
「いや、いくらしんどくても買いものぐらい行けるわ」

とは言うても、実際頼まれたら絶対行かへんかったとは思う。
たぶんオカンもそれをわかっとってなまえちゃんに頼んだんやろうけど、でもなまえちゃんに頼んだんやったら俺にも声かけろっちゅう話やねん。
なまえちゃんが行くなら俺も行くに決まっとるやろ。
玄関で靴履いとるなまえちゃんをたまたま見かけてほんまよかったわ。

「なまえちゃん、危ないからこっち側歩いてな。ほんでおててつないどこ」

車道側に俺が立って、エコバッグを引っ掛けてない方の手でなまえちゃんの手をとる。
ありがとうってにこりと笑ったなまえちゃんが俺の手をきゅっと握ってきたから、俺も嬉しくなって握り返した。
はたから見たら、俺らは間違いなく仲のええ高校生カップルなんやろうな。
思わずフッフと笑みがこぼれて、つないだ手を大きく揺らしながら家までの道のりを歩く。

「…あ、サムくんからラインきとる」
「シカトしとき。置いてけぼりにされたこと拗ねとんのやろあいつ」

ほんまはさっきから俺のスマホにもサムからのラインがバンバン来とることに気づいとったんやけど、返すのが面倒やからフルシカトしとった。
せやからあいつ、ほんならなまえちゃんにとラインを送る相手を変えよったんや。
なまえちゃんは優しいから、返事せんでええって俺が言うても「サムくん、ご機嫌ななめみたいやね」って苦笑いしながらサムにライン返しとる。
なんやねん、俺といるのにそんなんされたら俺やってご機嫌ななめになってまうで。

「なあ、それあとでええやん。どうせ家ついたら嫌でも会うんやし、ほっといたらええねん」

子どもみたく口を尖らせて、今はサムやなくて俺に構ってほしいとアピールする。
するとなまえちゃんは俺の顔を見てやっぱり困ったような顔で微笑みながら、スマホをポッケにしまった。

「あとでサムくんに一緒にごめんねせんとね」
「ええ…それめっちゃ嫌や…。なまえちゃんは平気でも俺のことはただじゃ許さへんもんあいつ…。俺の分のプリンよこせとか言われそうやし…」
「プリンで許してくれるん?サムくん、可愛いね」
「どこがなん!?可愛い要素なんもないで!?てか、サムの話はもうやめや!全然おもんない!」

スマホをしまっても出てきよるサムの存在。
俺となまえちゃんの仲を邪魔しよってほんまムカつくわ。
ええか、絶対俺はお前に謝ったりせんからな。

「そうだ、ツムくん。もしプリンがなくなっちゃったら、お姉ちゃんのアイス一緒に食べへん?」
「えっ!食うてええの!?プリンよりそっちの方がええやん!」

一瞬にしてプライドを捨てた俺はなまえちゃんのアイスをもらうために、あわよくばあーんしてもらいながら食うために、家帰った瞬間にサムにそっこう謝ったし、なんか言われる前にプリンを譲った。




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