お姉ちゃんに甘えたい



「なまえちゃん、はよ来てや〜」

2段ベッドの上にゆっくりとのぼってくるなまえちゃんを待ちきれなくて声をかけた。
今晩は俺がなまえちゃんと一緒に寝る日やねん。
今行くからねってにこりと笑うなまえちゃんに俺もにこにこしてまう。

「俺のここ、あったまっとりますよ」
「ふふ、ありがとう」

先に俺が入ってあっためといた毛布をめくって、はいここへどうぞとなまえちゃんを誘導する。
くすくすと笑いながら毛布の中に入ってきたなまえちゃんの体はちょびっとだけひんやりしとった。
せやから、俺の体温を移すようにその小柄な体をぎゅっと抱きしめた。

「なまえちゃん、寒ない?」
「うん、あったかい。ツムくんのおかげやね」

俺の大好きななまえちゃんの笑顔がすぐ目の前にあって、耳に心地ええ優しいソプラノボイスも、華奢なのに柔らかい体も、全部今だけは俺のもんや。
なまえちゃんからするええ匂いをいっぱいに吸い込めば、肺の中が幸せで満たされてたまらずにうっとりする。
ああ、至福のひとときや。

「ツムくん、おやすみなさい」
「えっ、もう寝るん!?」
「あれ、まだやった?もう少しお話する?」
「する!」

俺が食い気味に返答すれば、なまえちゃんは眉尻を下げて柔らかく微笑みながら「なに話そっか?」って指先で髪をとかすように俺の頭を撫でてくれた。
高校生にもなって甘える俺をふんわりと受け止めて甘やかしてくれるなまえちゃんの優しさに胸がきゅうっとなる。
こうなるともっと甘えたくなんねん。

「あんな、お話もええけど今はなまえちゃんにめいっぱい甘えたい気分やねん」
「そうなん?じゃあ、甘えんぼツムくんのお願いをお姉ちゃんが聞いてあげるから、してほしいこと言うてみて?」
「優しすぎるなまえちゃんほんまに好き」
「ふふ、わたしもツムくん大好きだよ」

フッフ、大好きやって!
なまえちゃんにそう言ってもらえたことが嬉しすぎて、思わずなまえちゃんの柔らかい胸に顔をダイブさせた。
ぐりぐりと額を押しつけると、くすぐったそうに笑うなまえちゃんが俺の頭ごとその細い腕で苦しくならない程度に抱きしめてくれる。

「なまえちゃん、なでなでしてや」
「なでなで、ええこやね」
「ぎゅうてして」
「うん、ツムくんぎゅう」
「あとちゅうも」
「甘えんぼツムくんは欲張りさんやね」
「ダメなん?」
「ううん、ダメじゃないよ」

顔をあげたら瞳を優しげに細めて俺を見とるなまえちゃんがおった。
なまえちゃんは俺の前髪を手でそっとサイドに寄せると、ちゅって額にキスをひとつ落とした。
ほんまは違うところにしてほしかったんやけど、下からサムが「おいツム!あんま調子乗んなや!」ってクレーム入れてきよったから今日のところは諦めることにする。

「そろそろ寝よっか。ツムくんは明日も朝練やもんね」
「嫌や、まだ寝たくない…寝んのもったいない…」
「でも寝ないと朝起きれへんよ?」
「うぐ、せやけど…」

渋る俺になまえちゃんは少し困った顔を見せたかと思うと、ぱっとすぐに笑顔になって俺の顔を覗きこんだ。

「ツムくんはおはようのちゅういらないん?」
「えっ、おはようのちゅう…!?いる!めっちゃいる!」
「じゃあ、朝ちゃんと起きれたらね」

明日はさっきとは違うところにしちゃおうかなって、俺の唇に人差し指でちょんと触れたなまえちゃんの仕草が妙に色っぽくて一気にテンションが爆上げした。
「ハイッ!ちゃんと起きます!おやすみなさい!」って宣言して、そのあとちゃんとしっかり寝た。

ほんで翌朝、アラームが鳴ると同時にぱっちり目を覚ました俺はガバッと体を起こした。
俺ってこんなスッと起きれたんやなと我ながら感心しつつ、隣で寝ているなまえちゃんを揺すり起こす。

「なまえちゃん、朝やで!」
「ん…おはよう、ツムくん…」

眠たげに目をこするなまえちゃんがぼんやりした様子でのろのろと上体を起こした。
ゆっくりと瞬きをしながら俺の顔を見つめると、ちゃんと起きれてええこって柔らかく微笑んで、両手で俺の顔を挟んで優しく引き寄せる。
ほんで、ちゅって左頬にキス。

………えっ?

ええー!?そこなん!?

「ツムくん、今日も朝練がんばってね」

期待してたんとちゃうんやけど、でもなまえちゃんの笑顔が今日も眩しくて尊かったから、とりあえず心の中で合掌した。




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