宮姉弟の近すぎる距離感



今日はめっちゃムカつくことがあった。
そのせいで部活中もイラついてもうて、あのツムにまで「バレーに八つ当たりすんなや」って言われる始末。
こういう日は家に帰って姉ちゃんの顔見て、荒れた心を癒すのが一番なんやけど、その肝心の姉ちゃんが見あたらん。

「…姉ちゃんは?」
「なまえちゃんなら風呂やで」

風呂ならしゃあないと思って、姉ちゃんが出てくるまでおとなしく待つことにした。
リビングにあるソファーに腰をおろすと、絨毯の上に寝そべってバラエティ番組を見とったツムが振り返って俺の顔を見てくる。

「なんや」
「それはこっちのセリフや、いつまでイラついとんねん。なんか不満があるなら言えや」
「別にツムに対してムカついとるわけやない」
「ほんなら何にムカついとるん?」

ツムの問いに俺はしばし黙り込んだのちに、深い深いため息を吐き出した。
ほんまに今思い出してもムカつくねん。
あの暴言クソブタ女。

「…今日の昼休み、3年の女に呼び出されて付き合ってほしいって言われたんや」
「やったやん、告白おめ」
「アホか、全然めでたくないわ。俺が姉ちゃんおったらそれでええと思っとる人間なの知っとるやろ」
「おー、知っとる知っとる。俺とサムは昔からなまえちゃん一筋やしな」
「せやろ。それなのにあの女ときたら、断った途端に暴言吐いてきよってほんま不快やわ」
「そんなん今さらやん。俺やってなんべんも言われてきとるで?まあ言われたところでもう気にもしてへんけど」
「俺やって普段はそこまで気にしてへん。シスコンで何が悪いんって精神で生きとるし、これからもそれは変わらへん。せやけどな…」

あの女は俺のことだけやなく、姉ちゃんのことまで悪く言いよったんや。
地味で影が薄いだとか、スタイルが悪いだとか、俺とツムに似てへんからってほんまの姉弟ちゃうんやないかとか、失礼極まりないことを好き勝手言うてた。
ほんまに腹立って、さすがに俺もブチ切れて本気で怒鳴ってもうたんやけど、相手が女やなかったらぶん殴ってたと思う。

「俺は自分のことなら何を言われても大概は聞き流せる方や。でも姉ちゃんのことに関してはそうやない」
「…は?なまえちゃんの悪口言われたんか?おいそいつ、3年なん組のなんて名前の女や。クソブタのくせにいきりすぎやろ。なまえちゃんのこと悪く言うやつほんま死ぬほど嫌いやねん」

俺の話を聞いてキレはじめたツムの様子に、やっぱり俺らは双子なんやと改めて感じた。
俺とツムはおんなじやから、姉ちゃんにめいっぱい甘やかされたいと思っとると同時に、姉ちゃんの笑顔を守りたいとも思っとる。
俺らは姉ちゃんのことを愛しとんねん。

「あ゛ー、あかん。ムカつきすぎて心がすさんだ。風呂行ってスッキリさせてくる」
「姉ちゃんが入っとる言うとったやろ」
「なまえちゃんと一緒に入るからええ」
「はあ?そんなんしたら、お前姉ちゃんに…」
「なまえちゃんはそんなことで怒らんやん」

立ち上がったツムは俺の顔を真っ直ぐに見て「せやろ?」と当たり前のように言いよった。
そら確かに姉ちゃんはよっぽどのことがない限りは怒らんし、今でもたまに「一緒に風呂入ってもええ?」って聞くと「学校で何か嫌なことあったん?」って心配してほんまに一緒に入ってくれる人やけども。
ほんで背中流してくれたり、一緒に湯船に浸かりながら話を聞いてくれる優しい姉ちゃんやけども。

「サムはええの?」
「………俺も行く」

俺やってすさんだ心を姉ちゃんで癒したい。
せやから、俺も立ち上がってツムと一緒に姉ちゃんと風呂に入ることにした。
急に風呂場にやって来た俺らを姉ちゃんはびっくりしつつも、やっぱり拒絶することはなくて「ツムくんもサムくんも大きくなったから、3人やとお風呂狭いね」って笑いながら順番に頭を洗ってくれた。
しかも姉ちゃんのちょっと良いシャンプーとリンスを使ってくれたから、風呂から出たあとも姉ちゃんと同じ匂いが髪に残って、俺も単純な男やからそれだけでええ気分になった。




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