なんもない休日の遅めの朝



久々に部活の練習がオフの休日。
アラームの鳴らない遅めの朝はなんとも言えない贅沢さがある。

「サムくん、おはよう」
「ん、おはよ…」

寝ぼけた頭で目を開けると姉ちゃんの柔らかい笑顔がすぐ目の前にあって、ゆるりとした幸せを感じた。
高校生になっても姉弟で同じベッドを使って寝とる俺らの距離感を周りは変だと言うが、そんなんお前らに関係ないやろっていつも思う。
よそはよそ、うちはうちやねん。

「姉ちゃん、いつ起きたん…?」
「9時前くらいやったかな」
「ええ…1時間くらい前やん…なんで俺を起こさんの…」

俺が姉ちゃんの体をがっちりと抱きしめて寝ていたから、姉ちゃんは目が覚めても身動きとれずにずっとここにいたようだ。
俺が起きるまで暇つぶしに触っていたのであろうスマホを枕の横に置いた姉ちゃんは俺の顔を見て、少しだけ困ったように眉を八の字にして笑う。

「だってサムくん、すごく幸せそうな顔で寝てるんやもん。そんな寝顔見たら起こせへんよ」

慈しむような手つきで、ここ寝ぐせついとるよって俺の髪を撫でる姉ちゃんに胸がきゅうっとなる。
昔から変わらずに優しい愛情をめいっぱい注いでくれる姉ちゃんが大好きや。

「おいサム!いつまでなまえちゃんひとりじめしとんねん!もうお前のターンはしまいやぞ!」

2段ベッドの上から顔をのぞかせたツムの喧しい声が寝起きの頭に響いてイラっとした。
昨夜は俺が姉ちゃんと一緒に寝る日やったから、姉ちゃんのぬくもりを俺がひとりじめしとったのは確かやけど、姉ちゃんと寝る順番は日替わりなんやし、夜になれば今度はツムの番なんやから今ぐらい我慢せえって思う。

「ツムくん、おはよう」
「なまえちゃん、おはようさん〜」

今さっきまで怒っとったくせに、姉ちゃんに声をかけられた途端ににやけた顔になって猫なで声を出すツムにまたイラっとする。
しかも下におりてきて、当たり前のように俺と姉ちゃんが使っとる毛布の中に入り込んできよったから、ほんまにどついたろうかと思った。

「おい、入ってくんなや。狭い」
「せやったらお前が出ろや」
「なんでやねん、ここは俺の寝床やぞ」

定員オーバーのベッドの中はぎゅうぎゅうに狭くて、体のでかい男2人に挟まれとる姉ちゃんはさぞかし窮屈やったに違いない。
でも姉ちゃんは怒るどころか、おかしそうにくすくすわろてて全然嫌がってへんかった。
しかもツムの方へと体の向きを変えて、俺と同じように寝ぐせをつけとるその頭を愛おしそうに撫ではじめた。

「フッフ、もっとなでなでしてや〜」
「デレデレすんなや、気色悪い」
「あ゛あ?」

デレ顔からまた一変、二重人格なのかってぐらいにガラリと人相の悪い顔になるツムに俺も同じ顔をしてみせてガンを飛ばす。
バチバチと火花が飛ぶ間で、俺とツムの顔を交互に見た姉ちゃんは苦笑いをこぼしながらむくりと体を起こした。

「ふたりともそんな怖い顔せんといて」

そう言いながら、俺とツムの顔に手を伸ばした姉ちゃんの細い指が険しく寄せられた眉根に触れて、そろりと撫でてゆく。
それだけで眉間のシワはとれたし、イラついとった気持ちもどっかいった。
昔から姉ちゃんは俺らのケンカをあっという間にしずめることができる人なんや。

「遅くなっちゃったけど、朝ごはん食べへんとね。今日はお休みやし、オムライスでも作ろうかなぁ」
「えっ!俺、なまえちゃんのオムライスめっちゃ好きやねん!中にウインナー入っとるし!」
「姉ちゃん!俺のはウインナーぎょうさん入れてや!」

大好物でもある姉ちゃんの作るオムライスを食えることに歓喜して前のめりになる俺とツムの腹が同時にぐるると鳴った。
それを聞いた姉ちゃんがまたおかしそうに笑う。
ほんでにこにこ顔で俺らの手を引いて、3人一緒にベッドから出た。

やっぱりなんもない休日の遅めの朝は贅沢やと思った。




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