幸せの温度でとけそうだよ



昨日から降り始めた雪は翌朝には見事に積もっとった。
今日はちょうど休日で学校も部活も休み。
いつもならもう少し寝とるところやけど、俺とサムは上着と手袋を装備して家を飛び出した。

「うっは!雪やー!」
「こんな積もんの久々やなぁ!」
「サム、雪だるま作るで!でっかいやつ!」
「よっしゃ、ほんなら俺は頭のほう作るからツムは体な!」
「あ?俺が頭やりたいんやけど」
「は?そこはどっちでもええやろ」
「じゃあサムが体やったらええやん」
「いや、俺は頭作りたい」

なんやねん、どっちでもええやろ言うてきたくせにサムやって頭のほう作るのにこだわっとるやんけ。
こうなったらしゃあないから、俺とサムはじゃんけんで頭と体どっちをやるか決めることにした。
「じゃーんけーん、ぽん!」って声が冬の空に響く。

「っしゃあ!俺が頭や!」
「くっそ、負けた…!」

じゃんけんでサムに勝った俺は大きくガッツポーズして、ほんで軽く準備運動をしながら家の前の道路に立った。
ここはそんな車が通る道やないから、まだ雪はほぼ綺麗な状態で残っとる。

「どんぐらいの作るん?1メートルか?」
「そんなんじゃショボイわ、2メートルやろ」

今から試合でもするんかいってぐらいに気合いを入れて、俺とサムは二手にわかれて雪だるま作りをはじめた。
最初は小さい雪玉を雪の上で転がしまくって、何度も何度もそれを繰り返す。
どんどんでかくなる雪玉はでかくなればなるほど重量を増して、転がすのも一苦労になってきた。
思ったんやけど、これ持ち上げんのキツない…?

「おっっっも!!」
「もっと気張りや、お前が頭やる言うたんやで」

家の庭まで雪だるまの頭と体を転がして運んできたところで、いよいよ頭の部分を体の上に乗せる時がきたんやけど、案の定クソ重かった。
サムのやつ、ちょっとぐらい手ぇ貸してくてもええやろ!
ただ見とるだけのサムに腹立ちながらも俺は「だぁああっ!!」と声を腹の底から出して、渾身の力で頭を持ち上げて体と合体させた。
両膝に手をつきながらゼェゼェと肩で息をしとると、カラカラと窓が開く音が聞こえてきて、顔を上げれば目を丸くしてびっくりしとるなまえちゃんが庭を見とった。

「わあ、雪だるま作ったんやね。すごい、おっきいね」
「せやろ!?俺、むっちゃ頑張ったんやで!」
「姉ちゃん、この雪だるまあと顔のとこ作ったら完成なんやけど、家に良さそうなもんあったりせぇへん?」

サムにそう聞かれたなまえちゃんは少し考える素振りを見せると、ぽんと手をたたいて「ちょっと待っとってね」と一旦顔を引っ込めた。
ほんで数分後、パタパタと戻ってきたなまえちゃんは庭におる俺とサムを手招きして、俺らの手の上にいくつかのボタンを乗せてくれた。
黒いやつは目にできそうやし、赤いやつは口に使えそうや。
さすがなまえちゃんやなぁ。
なまえちゃんにお礼を言って、早速雪だるまの顔を作ろうとしたところで「あ、ツムくん」と呼び止められた。
ん?って振り返ったら、ふわって首のところにやわらかいもんを巻きつけられて目を丸くする。

「風邪引いたら大変やから」

やわらかいのはマフラーやった。
なまえちゃんの両手が俺の頬を包むようにぴたりと触れて「冷えちゃったんやね、ほっぺもお鼻も真っ赤」って言うてくすくす笑うその優しい笑顔も、手のひらから頬へと伝わる体温もあったかくて、じわじわと俺の顔に熱が集まる。

「はい、サムくんもね」
「ん、ありがと姉ちゃん」

どういたしましてって瞳を細めてサムの首にもマフラーを巻いたなまえちゃんは俺にやったのと同じようにサムの頬にも両手をくっつけとった。
「姉ちゃんの手、あったかいなぁ」って笑っとるサムの顔はとけだした雪みたいにだらしがない。
いやでも、俺もこんな顔しとったかもしれへん…。

雪だるま完成したら一緒に写真撮ろうなってなまえちゃんと約束して、最後の仕上げやとサムと雪だるまの顔を作った。
俺もサムもあんまセンスがなくてちょっといびつな顔になってしもたけど、なまえちゃんが「大丈夫、かわいくできとるよ」って言うてくれたから、まあええか。
ただオカンには「こんなアホみたいにでかいの作って…」って呆れられたけどな。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -