この真実だけでもう胃がもたれてゆく



「北くん?」

恥ずかしいところを見られてしまったなと思った。
俺が脇に抱えているそれなりにデカいぬいぐるみ。
コンビニのくじを試しに一回引いてみたら、なんとA賞のコレが当たってしまったのだ。

こんなデカいのじゃなくて良かったんやけどな…。
俺としてはD賞のキーホルダーとかで良かった。

「それ、北くんが当てたん?」
「…おん」

目を丸くして俺とぬいぐるみを見ている宮さん。
正直、気まずい。
一応理由があってこのくじを引いたわけではあるが、まさかこんなことになるとは思わなかったので俺は今内心かなり困っている。
なんて言ったらええんやろか…。

だが、彼女は俺の心をコロッと変えてくれた。

「すごい!A賞!」
「!…宮さん、これがA賞やってわかったん?」
「もちろんわかるよ、だって私もそのくじ何回もチャレンジしたんやもん」

この狐のキャラクター好きなんよって、にこにこ笑いながら話す宮さんに心がふわりと軽くなる。
そして、やっぱりそうだったと確信も得た。
前に彼女がこの狐の絵柄が入ったシャーペンを持っていたのを見たことがあったため、もしかしたら好きなのかもしれないと思ったのだ。
だから俺はくじを引いてみることにしたのである。
キーホルダーでも当たって宮さんにあげたら、彼女は喜ぶんじゃないかと想像して。

でも実際はあまり望ましくない物が当たった。
A賞とは言ってもこのデカいぬいぐるみ。
さすがに迷惑の部類に入るサイズ感だと思われる。
だが何回も引くぐらい好きなのであれば、もしかするとこんな物でも喜ばれるのでは…。

「…コレ、あげるわ」
「えっ?」
「欲しかったらやけど…」
「えっえっ?た、確かに欲しくてくじ何回も引いてたけど、でも北くんが当てたA賞なのに…」
「気にせんでええよ、俺のためのとちゃうし」
「???」

首を傾げる宮さんにぬいぐるみを差し出す。
彼女は本当に良いのだろうかと戸惑いながらも、ぬいぐるみを俺の手から受け取ってくれた。
小柄な宮さんが持つと狐がもっとデカく感じる。

「ほんまに良いの…?」
「おん、宮さんにもらって欲しいねん」

丸い瞳をぱちぱちと瞬かせて、狐と顔を合わせた宮さんは次の瞬間ふにゅりと頬を緩めた。
ぬいぐるみを抱き締めて「嬉しい、北くんありがとう」と笑った彼女のなんと愛らしいことか。
やはりこれは彼女のためにあるべき物だったのだ。
それぐらい絵になる。可愛い。

「どうしよう、北くんにお礼したい」
「いらんよ、もうええもんもろたし」
「えっ?」

君の嬉しそうな笑顔が見れたから、十分だ。



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