明日に訳なんていらない



なまえ姉とケンカした。
いやケンカと言うか、俺が一方的に怒ってふてくされてるだけなんだけど…。

「今日はなまえ姉とは寝ないから」

そう言って寝室を出てきた。
いつもとは違う部屋に布団を敷いて横になる。
毎日一緒に寝てたせいか一人の布団は少し肌寒い。

ケンカの理由は俺のヤキモチだった。
だってなまえ姉が俺とのデート中に他の男の話なんてするから…。
なまえ姉に悪気があったわけじゃないことぐらいわかってる、わかってるんだよ。
こんなことで妬いてる俺がこどもなんだ。
それなのに「なまえ姉のそういうとこ、ほんと嫌い」なんて言っちゃってさ…。

嫌いなわけないのに。
めちゃくちゃ好きなのに。
ああもう、なんであんなこと言っちゃったかな…。

「はぁ…全然、寝れないし…」

一人悶々としながら繰り返す寝返り。
時刻はもう深夜2時。
心のどこかではなまえ姉から謝りにきてくれるかも…なんて甘えた考えの俺もいた。
でもなまえ姉は来なかった。
一緒に寝ないって言ったのは俺だし、当たり前だ。

たかがケンカ。
明日の朝にはきっといつも通りに戻ってるはず。
そう考えるけどやっぱり不安が拭えない。
もしこのまま仲直りできなかったら?
なまえ姉に呆れられて、嫌われたら?
ダメだ、そんなの…生きてけない…。

「っ、」

ガバッと起きて、隣の寝室へと向かった。
カーテン越しに月明かりが柔らかく照らす薄暗い部屋の中、ベッドの上で眠るなまえ姉が見える。
静かに近寄って上から覗き込むと、すやすや小さな寝息をたてるなまえ姉の寝顔。

なんだよ、なんで寝てんの…。
でも寝顔可愛い…ずるい…。

ベッドのそばに座り込んで、毛布から出てるなまえ姉の手をそっと握る。

「ごめん…ごめんね、なまえ姉…」
「………」
「嫌いなんて言って、ほんとにごめん…」
「………」
「なまえ姉…俺のこと、嫌いにならないで…」

眠るなまえ姉に祈るように何度も謝罪する。
すると、きゅっと俺の手を握り返される感覚。
ハッと顔を上げると「んっ…りん、くん…?」って眠たげな目でなまえ姉が俺の名を呼んだ。
それだけで、ちょっと泣きそうになった。

「どうしたの…?眠れなくなっちゃった…?」
「、うん…なまえ姉がいないと、寝れなくて…」
「ふふ…倫くん、おいで。一緒に寝ようよ」
「…!いいの…?」
「どうして?悪いことなんてあるの?」
「え…」

月明かりの中で優しい顔で柔らかく微笑むなまえ姉に思わず見惚れる。
毛布をめくってシーツをぽんぽんとするなまえ姉に誘われて、俺はそろりとベッドの中に入った。
冷えてる俺の体をあっためるみたいにぎゅっとしてくれて、頭をよしよしと撫でられる。
すごく安心した。
そしたら、急激に眠くなってきて…。

「なまえ姉…好き…大好き…」
「わたしも倫くん大好きだよ」
「ん…俺のこと…許してくれる…?」
「許すも何も、最初から怒ってないよ」

優しい、優しすぎて泣けてくる。

ごめんね、なまえ姉。
朝起きたらもう一度ちゃんと謝るよ。
それから、いつも本当にありがとう。
こんな俺を愛してくれて。



明日に訳なんていらない




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -