心のど真ん中を撃ち抜いて



「なあなあ、宮さんてかわええよな?」
「俺も気になっとった。物腰柔らかでほわぁっとしとるよな」
「この間さ、うちのクラス調理実習あったんやけど宮さん料理できはる人でこれがむっちゃ美味くて!胃袋掴まれたわ〜」
「マジか!ええなぁ、俺も食いて〜」

最近、男子が宮さんの話をしているのを耳にすることが増えた。
その内容は悪いものではなくて、むしろ「優しい」とか「可愛い」とか良いものばかり。
俺はそれに対し、そうやろ宮さんはかわええねんって誇らしげに思うと同時にモヤっともしていた。
宮さんのええところを知ってもらえるのは嬉しいんやけど、なんか寂しいっちゅうか、微妙に嫌っちゅうか…。

宮さんはモテていなかったわけではない。
俺はそういうのに疎くて気づかなかったが、アラン達が言うには彼女は密かに人気があったらしい。
そんな疎い俺でもわかるぐらいに今の宮さんは男子の注目を集めている。

「モテ期なんやろか…」
「うん?北くんモテ期なの?」
「いや、俺やなくて宮さんの話や」
「??」

不思議そうにきょとんと俺を見上げて首を傾げている宮さん。
ほらもうかわええ。
図書室からの帰り、たまたま会った宮さんと3年の教室まで戻って来るとやはり遠目から視線を感じた。

「あれ北やんな?」
「そう言えば、宮さんとよう一緒におるとこ見るけど仲ええんか?」
「でもあの二人クラスちゃうで?」
「えっ゛、まさか付き合っとるとか…!?」
「いやいや、あの北やで?無いやろ」
「あいつクソ真面目やし、学生の内は付き合うとか考えられへんって言ってそうやしな」

なんやねんそれ。
俺やって普通に恋愛ぐらいするわ。
今だって俺はこの隣に居る女の子に片思いしていて、いつか恋人と言う立場で彼女の隣を歩ける日が来たら良いのになどと思っていると言うのに。

「それじゃ北くん、わたし教室あっちだから行くね」
「!」

またねと笑顔で俺に小さく手を振る宮さん。
恋をするとクラスが違うと言うだけでも離れ難い気持ちになるのだと最近知った。
だからせめてその姿が見えなくなるまで、遠ざかってゆく彼女の背中を見送る。

だが彼女は教室に入る前に男子に捕まった。
さっき話をしていた連中だ。

「なあなあ、宮さんて北と仲ええの?」
「え?北くん?」
「よう一緒におるやん?付き合っとんの?」
「?わたし付き合ってる人は居ないけど…」
「お、フリーなんや!ほんなら俺立候補しよかな〜」
「抜けがけすんなや!なあ俺は?俺も今彼女おらんのやけど!」
「え、ええと…」

気付いたら足が動いていた。

「相手にせんでええよ」
「!北くん…」

宮さんの手を掴んで、男子の輪の中から引っ張り出す。
「げっ」と顔を引き攣らせた男子達。

「困らせるのやめてもろてええか?」
「は…?」
「大事な子やねん」

呆気にとられいる男子達をそこへ放置し、俺は宮さんの手を引いてその場を離れた。
柄にもなく目立つような行動をとってしまったから、一旦静かな場所へと移動する。
宮さんは教室に戻るとこやったのに悪いことをしてしもたかな。

「あの、北くん」
「…ん?」
「さっきの…」

さっきの、と言われてはたりとする。
俺は彼女の前であの連中に「大事な子」なんてことを口走った気がする。

「ありがとう」
「え、」
「助けてくれたから」

そう言って宮さんは眉尻を下げて微笑んだ。
ああ、そっちか…とホッとしたような残念なようなどっちつかずの気持ちが生まれる。

「嬉しかった、ありがとう北くん」

「嬉しかった」のその意味を深くまで聞く勇気は今はまだ無いのだけれど。
でもその笑顔が見られるのなら。
俺はいつだって君を助けに駆けつける。



心のど真ん中を撃ち抜いて




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