君がいなきゃダメってことさ



なまえ姉はバイトで、俺は部活が休みだった。
だから今日は俺が晩飯作ろうかなって思ったんだ。

「ただいまぁ」
「!おかえり、なまえ姉。あのさ、晩飯作ってあるんだけど…食べる?それとも、先に風呂入るなら準備して…」
「えっ、倫くんがご飯作ってくたの?」
「あ、うん。なまえ姉バイト帰りで作るの大変だろうし、俺は部活休みだったから…」

普段あまりしないことに、自分でやっておいてあれだけどちょっと照れが生まれた。
なまえ姉が作るものに比べたらクオリティーは下がるかもだけど、でもけっこう頑張って作ったし…。
ドキドキそわそわしながらなまえ姉の反応をチラリと見ると、なまえ姉はふわりと嬉しそうに「先にご飯食べたいな」と笑ってくれた。

コートを脱いで、手洗いうがいを済ませたなまえ姉が席につく。
俺はなまえ姉の前に座った。
両手を合わせて、二人で「いただきます」をする。

「すごい、おっきいハンバーグだね。倫くんがこねて焼いたの?」
「うん、前になまえ姉と一緒に作った時のレシピ覚えてた」

俺の手がデカイから、サイズがいつもより大きめになってしまったハンバーグ。
なまえ姉がにこにこと笑顔でひと口大に切ったそれを頬張る。
俺も同じように口の中に放り込んだ。

でも、あれ?
なんか、思ってたのと違うな…?
なまえ姉の真似をして作ったはずなんだけど、俺の好きな味とはちょっと違う。

「倫くん?どうかした?」
「いや、その…ごめん、あんまり美味く出来てなかった…」
「えっ?そんなことないよ?とっても美味しいと思うけど」
「でも、なまえ姉が作ったやつの方が美味い…俺はなまえ姉のハンバーグのが好き…」

正直、納得のいかない出来に落ち込んだ。
はあ…何が違ったんだろ…。
なまえ姉に美味しいもの食べさせたかったのにな…。
そうやって俺が肩を落としている間、なまえ姉は「ふふっ」と笑いながらまたひと口、もうひと口とハンバーグを食べ進めていた。
白米もいつもよりもりもり食べてる。
あとサラダも。
俺が作ったドレッシングをかけたやつ。

「…なまえ姉、めっちゃ食うね」
「だって美味しいもん」
「…メシ、おかわりいる?」
「うん、おかわりする」

なまえ姉から受け取ったお茶碗に炊飯器からほかほかの白米をよそう。
普段おかわりするのは俺の方で、なまえ姉は大体一杯で終わるのに今日は珍しい。
バイトが忙しかったとか?
だからお腹空いてたのかな。

「倫くんが作ってくれたからだよ」
「えっ?」
「嬉しくていつもより美味しく感じるの」

ふわりと瞳を優しげに細めて笑うなまえ姉に、俺はようやく、ああそういうことなんだってわかったんだ。
どうしてなまえ姉が作るとどれも美味しくて俺の好きな味になるのか。
それはなまえ姉が作ってくれたからだ。
そして、それが嬉しいからだ。

何かが違ったわけじゃない。
俺もなまえ姉と、一緒だったんだ。

「あのさ、なまえ姉」
「うん?」
「俺、また作るよ」

部活が休みの時ぐらいしか作れないけどさ。
でもなまえ姉のために作りたいんだよ。
大好きななまえ姉のために。

「ありがとう、楽しみにしてるね」

嬉しそうに笑うなまえ姉の顔を見ながらもう一度ハンバーグを食べたら、今度は案外悪くないじゃんって思えた。



君がいなきゃダメってことさ




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