Don’t be shy baby



今日はバレンタイン。
学校の至る所でチョコの匂いがしているし、休み時間はいつもより賑わっているように感じる。

「すごいねそのチョコ。全部女子から?」
「おん、バレンタインやからってくれた」

ええ日やなぁって大量のチョコを抱えている治を見て、うえっと軽く胃もたれ。
見てるだけで甘すぎ。

「そんなにもらって来月大丈夫なの?」
「何がや」
「ホワイトデー。お返し大変そう」
「いや?お返しとかせんし。向こうが勝手にくれたんやから別にええやろ」
「うわ…」

侑は言わずもながだけど、治もわりと人でなしなところがあるよなと思う。

「そう言うお前こそどうしてるん?お返しなんてしとんの?」
「いや?そもそも貰わないようにしてるし」
「マジか、もったいな」
「俺はなんでも良いわけじゃないからね」

俺が欲しいのはただひとつ。
それさえあれば他はいらない。

「倫くん」
「!なまえ姉」
「よかった、治くんも一緒だった」
「およ、角名の姉ちゃんや。こんちわ」

………は?
こちらに駆け寄って来たなまえ姉が俺の前を通り過ぎて治を見上げた。
いや、ちょっと待って?
なんで治?俺ここにいるよ?

「わっ、いっぱいチョコ持ってるね。そんなにあるならもういらないかな…?」
「えっ、チョコくれはるんですか!?」
「うん。実は作りすぎちゃって困ってて、治くん食べるの好きって倫くんから聞いたからどうかと思って持って来たんだけど…」
「欲しいです!チョコください!」
「でも大丈夫…?胃もたれしちゃわない…?」
「大丈夫です食えます!ちゅうか、そのチョコ絶対美味いやつなんで食わなきゃ後悔してまう!」

キラキラした目でヨダレ垂らしそうな勢いの治に「そんな大げさだよ」と笑ってチョコを手渡したなまえ姉。
ねえほんと待って。
俺は何を見せられてんの?
なまえ姉が他の男にチョコあげてる光景とか俺には地獄でしかないんだけど。

「あざっす!やば、むっちゃ嬉しいわぁ」
「…治、それ返して」
「は?なんでやねん」
「なまえ姉のチョコは全部俺のだから返せ」
「倫くん?朝あげたチョコだけじゃ足りなかった?」

紙袋の中から治に渡したのと同じチョコがまた出てきて、それを俺に差し出してくるなまえ姉は何もわかっちゃいない。

「違う、そうじゃない」
「?チョコいらない?」
「いやいらなくないし、もらうけど…」

俺が今朝もらったのよりも簡単にラッピングされているそれは明らかな義理チョコ用。
俺の為に用意しておいてくれたのはガトーショコラだったし、それこそ手間も時間もかけてくれた本命だ。
だから、今さら治に嫉妬なんてする必要がないことぐらいわかってるんだけどさ…。

「なんや角名、男の嫉妬は見苦しいで」
「うるせぇよ…」
「ヤキモチなの?倫くん可愛いね」
「可愛いくねぇし…」

その日、ふてている俺を見てなまえ姉はニコニコしながら「倫くん可愛い」ってずっと言っていた。



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