好きな子を泥酔させてお持ち帰りしてきた激重愛を抱いてる治




頭がくらくらする。
あまりお酒は詳しくないのだけれど、飲みやすくて美味しいお酒をすすめられてつい飲みすぎてしまった。
瞼が重くて、体に力が入らない。

「あー、寝顔もかわええなぁ」

声がする。男の人。誰だろう。
でもこの声、聞いたことある…。

「うおっ、軽っ。これちゃんと飯食っとるんかな」

体に感じた浮遊感。
ふわりと香るご飯屋さんの匂い。
やっぱり、知ってる。

この声と匂い、おにぎり宮の店長さんだ。

「、んっ…」
「およ。起きてもうたか」
「ぁ、…どし…て…?」

目を開けるとすぐ近くに店長さんの顔があって、私は彼にお姫様抱っこをされているのだと理解した。
安定感のある足取りでどこかに運ばれている。

「レディーキラーって知っとる?」
「、ぇ…?」
「なまえちゃんが飲んでたやつ、そう呼ばれとる酒やねん。要するに女を落とすのに使われるカクテルやな」

レディーキラー…?何を言ってるの…?
だってそのお酒をすすめてきたのは…

「男からすすめられた酒をそう簡単に信じて飲んだらあかんで。俺みたいな悪い男もおるんやから」
「っ、…」

どこかの部屋に着いて、ベッドの上に私を寝かせた店長さんが私の首筋に顔を擦り寄せてきた。
逃げたくても視界がぐらぐらして動けない。

「ん、ええ匂い」
「、ゃっ…」
「俺な、なまえちゃんを一目見たときから惚れてん」

私の背中とベッドシーツの間に店長さんの両腕が入り込んできて、そのままぎゅうっと抱き締められる。

「好きや、なまえちゃん。ずっとこの時を待っとった」

まるで本当の恋人に囁くみたいに甘い声。
おでこ、目尻、鼻、ほっぺと順番に降り注ぐキス。
そして最後に唇が重なった。
あまりにも優しいそれに、私はこの人に大事にされ、愛されていると頭が錯覚を起こしそうになる。
違うのに、こんなの、絶対ダメなのに…
店長さんの手が私のブラウスのボタンに触れる。
やだ…だめ…やめて…お願い…っ…

「っ、…ふ…ぅ…」
「あちゃ、泣かせてもうた。なまえちゃんごめんなぁ、なんも怖いことあらへんから泣かんといて?俺ほんまにめいっぱい優しく抱くし」
「う、ぅ…や、ぁっ…」

力の入らない手で店長さんの胸板を押し返す。
でも全然ぴくりとも動かない。
私がぐすぐす泣きながらヤダヤダと首を横に振っていたら、はあ〜…と大きなため息が降ってきて思わずビクッとしてしまった。

あ、れ…さっきまで、店長さん…
優しい顔、してた…のに…

「なあ、なんで俺を拒否しよるん?」

温度の感じられない声、光の無い瞳。

「ひどいやんか、俺はなまえちゃんのことこんなに愛しとるのに」
「、ひっ…」
「優しくしたろう思っとったけどやめや。その体に嫌ってほど俺の愛を刻み込んだるから覚悟しぃや」

店長さんは優しい人だ、でも私はどこか苦手だった。
どうして苦手に思うのかずっとわからなかったけど、今ならその理由がわかる。
私は本能的に恐怖を感じていたのだ。
宮治の内側に潜むバケモノに。




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