どんな君でも全部受け止められる



なまえ姉がグラウンドを走っている姿を見つけた。
この暑い時期にやる体育って嫌だよなと思いながら、教室の窓からグラウンドを眺め続ける。

俺なら適当にやるところを、なまえ姉は一生懸命に走って、額に滲む汗を拭っていた。
友人であろう女子が走り終えたなまえ姉のところに駆け寄ってきて、楽しそうに笑い合ってる。

「角名、あの中に姉ちゃんおるん?」
「…何のこと?」
「すっとぼけんな、3年が体育やっとるとこガン見してたやろ」
「見てない。授業中なんだから話しかけてくんな」

俺が声量に気をつけながら後ろの席の治にそう言っても「なあ、角名姉どれ?」とまだ喋りかけてくる。
だから俺もフルシカトしてやった。

なまえ姉を見られたくないのはいつものことだけど、今日は特にダメだ

だって、体育の時のなまえ姉はちょっとエロいから





「あれ?倫くん、どうしたの…っきゃ、!」

授業が終わってすぐ、しつこい治をかわして外に出て来た俺はまだグラウンドにいたなまえ姉の手をとって駆け出した。

「ふう…ここなら良いかな」
「えっと、倫くん…?」

グラウンドの片隅にある倉庫の中になまえ姉を連れ込んだ俺は外の様子をうかがい、誰も追いかけて来ていないことを確認した。
状況がわかってないなまえ姉は首を傾げるばかりで、俺の顔を見上げている。

「ごめん急に。ちょっと面倒なのに追われてるから、ここで一緒に隠れててくれる?」
「?良いけど、誰に追われてるの?」
「治と…あと多分侑もいる」
「あの双子くんかぁ。ほんとにバレー部は仲良しだね」
「…話聞いてた?追われてるんだけど」

のほほんと笑ってる相変わらずのなまえ姉に脱力しかけながらも、狭い倉庫内に二人並んで腰を下ろした。
でも蒸し暑くて、じわじわと汗が滲み出てくるのを感じる。
隣をチラリと見ればなまえ姉も「暑いね…」と体操服の襟元を掴んでパタパタと服の中に風を送っていた。

「なまえ姉、体育頑張ってたね。教室から走ってるとこ見えた」
「ちゃんと走らないと怒られちゃうから。体育の先生、熱血で厳しいんだもん」

暑さのせいだと思うけど、頬を赤くして笑うなまえ姉。
白い首筋を伝う汗が色っぽい。

二人きりだし、ちょっとぐらいなら良いかな…

「倫くん?…、わっ!」

なまえ姉の腕を掴んで引き寄せ、その体を抱き締めた。
肩口に顔を埋めて、大きく深呼吸。
汗と柔軟剤となまえ姉の匂いがする。

俺、これ好きなんだよね

「や、やだ、匂いなんて嗅いじゃダメっ…」

嫌がって離れようとするなまえ姉を逃がさないように腕に力を込める。
赤い顔で眉尻をこれでもかと言うぐらいに下げて「汗かいてるから…っ」と瞳を潤ませるなまえ姉が可愛い。

「汗かいてても好きだよ、なまえ姉の匂いが濃くなる」
「っ…倫くん、変態さんなの…?」
「そうかも。なまえ姉の汗、舐めたいとか思ってるし」
「!?だ、だめだよ、汚いからっ…」
「汚くないよ、なまえ姉の汗だもん」

目の前にあるなまえ姉の頬に顔を寄せて、ペロリと汗ばむ肌を舐めた。
しょっぱいのに甘くも感じられる。
「おいしいよ?」と言ってあげれば、なまえ姉はまた顔を赤くして返す言葉に困り果てていた。





「あっっっつ…そろそろヤバイ、限界かも…」
「もう出ても大丈夫なんじゃないかな?わたしも制服に着替えないとだし…」
「俺はジャージに着替えたい…ワイシャツが汗で張り付いて気持ち悪い…」
「倫くん汗すごいよ、大丈夫?」

ふらりと立ち上がった俺を心配するなまえ姉はさっきよりも汗が引いていた。
もともとそんなに汗流すタイプじゃないし、じっとしている内に体の熱がおさまってきたんだろう。

でもよかった

なまえ姉の汗に興奮する奴が俺以外にも現れたらヤバイし

「倫くん、お姉ちゃんのだけどタオル貸してあげる」
「え、いいの?」
「うん、倫くんが風邪引いちゃったら大変だもん。ちゃんと汗拭いてから授業受けるんだよ?」

なまえ姉の優しさに心打たれながら、ありがたくタオルを受け取った。
それから3年の教室に向かうなまえ姉と別れて、俺も自分の教室に戻ると「お前どこ行ってたん?つか、その汗なに?」とまた治に絡まれたけど適当に流しながらタオルに顔を埋めた。

はー…なまえ姉の匂い

「…角名、お前何しとるん」
「なまえ姉の匂いを肺に送り込んでる」
「キショ…」
「うるせぇよ」



どんな君でも全部受け止められる




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