04



「侑はな、この建物のてっぺんにある奥の部屋におんねん」

大股でキビキビ歩く銀くんの後を必死について行く。
そしてエレベーターのようなものに乗り、一度途中の階で降りたりした。
てっぺんに行くにはあと何回かエレベーターを乗り継がないといけないらしい。

「乗り継ぎや、降りるで」
「は、はい」

遅れないように素早くエレベーターから降りる。
だが、目の前にいる銀くんが急に立ち止まったからその背中に顔をぶつけてしまった。

「上の階へ行きたいんやけどこれで行けるか?」
「すんません、これより上に行くには別の場所からでないとあかんくて。案内させていただきますんで、どうぞこちらへ」

銀くんの前に誰か立ってる。
私は後ろからそうっとその人を見上げてみた。

わ、あ…すごく背が高い…
それに強面で、ちょっと怖いかも…

銀くんがこっそり耳打ちで教えてくれたのだが、この人は大耳と言う名の神様なのだとか。
そうして神様の案内も兼ねた銀くんが目的のエレベーター前へ到着すると…。

「さあさあお客様、到着でございます。右手のお座敷へどうぞ」

中から鬼のような顔をした者が3人このフロアへ降りて来た。
銀くんがサッと私を隠すように前に立ってくれる。
だがそこでお客様の案内役を務めていた男が「んん?」と首を捻ってこちらを振り返った。

その瞬間、銀くんにぐっとエレベーターの中へ押し込まれた。
それに続いて大耳の神様も乗り込んできて、私の姿はすっぽり隠れる形となった。

「銀、その臭いはなんだ?人間臭いぞ?」
「あー…すんません、実は風呂に三日入ってなくて」
「なにィ!?お前ここがどこだかわかっておるのか!?湯屋だぞ!?さっさと身を清めてこんか!」

嘘だ。銀くんは臭くなんてない。
彼は私からしている人間臭を庇って、ああ言ってくれたのだ。
後ろ手で「上へ行け」とサインを送ってくる銀くんに申し訳ない気持ちを抱きながら、私は心の中でごめんなさいと謝って上へ行くレバー引いた。

エレベーターの戸が閉まって、動き始める。
銀くんとは別れて、密室に神様と二人きり。
チラリと横を見上げると、まさかの神様もこちらを見下ろしていて目が合ってしまった。
ドキリと心臓が嫌な音を立てて、慌てて下を向く。

ど、どうしよう、失礼だったかな…

それから少しして、エレベーターは最上階に到着。
ついにここまで来てしまったのだと急激な不安と緊張で動けずにいると、背中をぽんっと押された。
エレベーターの外に出てから、ハッとして後ろを振り返る。

「ほな、頑張りや」

あの強面の神様が穏やかな笑みを浮かべて片手をあげていた。
どうして私がここに用があるとわかったのか。
最初は不思議でいっぱいだったけれど、でも少ししてこの人は神様だから何でもお見通しなのだと理解した。
そして私は愚か者だと痛感した。
さっき人を見かけて判断してしまったから。

全然怖い人なんかじゃなかった、優しい神様だった。

私は慌てて頭を下げた。
エレベーターの戸が閉まり、大耳の神様を乗せてまた下のフロアへと降りていく。
どうやらわざわざ私をここへ降ろす為に一緒に最上階まで来てくれたらしい。

「ありがとうございます…私、頑張ります」

色んな人の力を借りてここまで来れたのだ、怖がってる場合じゃない。
私は自分の頬を両手でパシン!と叩いて、よしっと気合いを入れた。




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