彼女持ち北くんは料理部女子が手作りお菓子で迫ってきても返り討ちにする



調理実習でマフィンを作った。
こう言う時、女の子は気になる男の子にあげたりもするのだけれど私は彼氏がいるのでマフィンをあげる人は最初から決まっていた。

私の彼氏である信介くんに会いに、彼のクラスへ足を運ぶ。
喜んでくれるかな?
おいしいって言ってくれるかな?
信介くんのことを思って丁寧に作ったマフィン。
足取り軽く教室の前に着いて、そっと中を覗いて彼を探すと…

「うちのクラス調理実習だったんよ。マフィン作ったんやけどどうやろ?」
「えらい綺麗にできとるなぁ、売りもんみたいや」
「ほんま?そう言ってもらえて嬉しい!これ実はね、北くんのために作ったマフィンやねん」
「俺のために?」
「うん、だからその…もらって欲しい」

信介くんの席の前にはすでに女の子が立っていた。
同じクラスで料理部の××さん。
だから今日作ったマフィンも彼女のは本当にすごく綺麗に美味しそうにできていて、家庭科の先生にも褒められていたのを覚えている。
そう言えば××さんも気になる男の子に渡すって友達に話してたな…。
どうしよう…まさかその相手が信介くんだったなんて…。

今の私には二人の間に割って入っていけるような勇気はなくて、教室の外で立ち尽くすばかり。
××さんのと比べたら私のマフィンはちょっと形が崩れてるし、彼女のマフィンを売りものみたいで綺麗だと褒めていた信介くんにこれを今さら差し出せる自信もなくなってしまった。
料理部が作ったマフィンの方が絶対美味しいもん…。
信介くんもそっちの方がきっと欲しいよね…。

「悪いんやけどそれはもらえへんわ」

えっ…?
あれ、今信介くん断った…?

「えっ…な、なんで?綺麗にできとるって褒めてくれたのに…」
「確かにようできとるとは思う。けど俺な、彼女おんねん。××さんも知っとるやろ?」
「っ…それは、知ってたけど…でも、私も北くんに食べて欲しくて作ったのに…」

××さんが泣きそうになりながら信介くんの制服の裾を掴んだ。
でも信介くんは冷静に彼女の手を掴んで離していた。

「彼女でもない女子からそう簡単にものをもらったらあかんと思うねん。それが手作りやったら尚更や」
「なんで…?もらってくれるぐらいしても…」
「もし自分の彼女が男からものをもらったりあげたりしてたら俺は嫌やと思う。せやから俺は自分がされて嫌なことは彼女にもしたくないねん」

信介くんはハッキリとそう告げていた。
彼がそんなふうに思ってくれてたんだとわかって、嬉しくてなんだか涙が出そうになる。

そして、ぱちりと信介くんと目が合った。
私に気づいた彼はその目を優しげに細めてほほ笑み、席を立ってこちらに来てくれた。

「そんなところにおらんで入って来たらええのに」
「だって、話してたから…」
「話ならもう終わったで。ほんで、なまえちゃんは俺に用があって来たんやろ?」

信介くんの視線が私の手にあるマフィンに落ちる。

「ぁ、えと…これね、マフィン…あんまり綺麗な出来じゃないんだけど…」
「そんなことあらへんよ。美味そうにできとるやん。これは俺がもろてええやつか?」
「う、うんっ…信介くんの、です…」

嬉し恥ずかしくて最後はつい敬語になってしまった。
ふっと笑った信介くんが私の手からマフィンを取って「ありがとう、大事に食うわ」と言ってくれた。
今度はもっと上手に作れるようにがんばるね。




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