マネのお見舞いに来た稲荷崎2年ズ


今朝は体調不良で学校を休んでしまったのだけれど、午後にはすっかり元気を取り戻していた。
そんな私の様子を見て安心したのか、お買い物に言ってくるからお留守番お願いねとお母さんは出掛けていった。

家には私一人。そんな時。
ピンポーンとインターホンが鳴ったので宅配便だろうかと玄関のドアを開けたら、ニンマリと狐のような笑みを浮かべている金髪の同級生がそこに立っていて思わずドアを閉めてしまった。
だが、ガッ!とドアの隙間に足を入れられて閉めるのを阻止される。

「おいコラ、人の顔見るなり挨拶も無しにドア閉めるってどういうことやねん」
「び、びっくりしてつい…。まさか侑くんがいるとは思わなかったから…」
「あん?俺だけやないで、こいつらもおるわ」

え、こいつら…?

恐る恐るドアから顔を覗かせて侑くんが指さす方を見てみると、「なんや元気そうやん」とホッとしたように笑った銀島くんと「腹減ったわ」と呟く治くん、それから一番後ろでスマホをいじっている角名くんの姿が確認できた。
まさかの男子バレー部2年レギュラー陣勢揃いの図にマネージャーである私の顔は引きつるばかり。

「部活終わりにわざわざ見舞いに来てやったんやから感謝せぇよ」
「それは、うん…どうもありがとう………って、ちょっと…!?」
「ほな、お邪魔します〜」

ぽんっと私の頭に手を置いた侑くんが次の瞬間にはさも当然のように家に上がり込んできたから私は信じられない気持ちで目を丸くした。
しかもそんな彼を止めるどころか治くん達まで玄関で靴を脱いで勝手に上がり込んでしまう始末。

誰も上がって良いなんて言ってない…!

「侑がさ、みょうじがいないと寂しいって泣いてたよ」
「えっ」
「はあ!?何適当なこと言うてんねん!泣いてへんわ!」
「でもバレーの調子は悪かったよな。みょうじおらんと調子でぇへんのはほんまやろ」
「んなっ…!た、たまたまや!俺は別にみょうじのことなんて、そのっ…」
「なあみょうじ、このプリンどこのやつなん?めっちゃうまい」
「………」

なんだろうこの状況。
角名くんと銀島くんにからかわれてしどろもどろになっている侑くんの耳が赤くなっているをぼんやり眺めていたら、治くんがいつの間にか冷蔵庫を開けて勝手にプリンを食べていた。
自由すぎる。もう返す言葉も無い。

「そうだ、はいこれ。一応お見舞いだし、みんなで1個ずつ中華まん買ってきたから食べなよ」
「わっ、買ってきてくれたの…?私のために、みんなが…?」
「せやで!ほらみょうじ、どれがええ?」
「えっ、あ…じゃあ、ピザまんにしようかな…」
「やった、俺のピザまん選ばれた」
「なんやねんお前!あんまん食えや!」
「じゃあ豚まんは俺がもろてええ?プリンだけじゃ足りひん」
「お前はなんでやねん」

本当に自由な人達。
でもその図々しさが今日はちょっとだけ心地良いかもしれない。
私はこそばゆさを感じながら「みんなありがとう」と笑った。
明日はちゃんと元気に学校に行こう。
そしてバレーボールに真剣に打ち込むみんなのお手伝いを私なりに精一杯するのだ。




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