いつだって君といたい
「お隣良いですか?」
委員会の集まりの日。
指定された教室に着き、適当な席に座って待機していると声を掛けられた。
柔らかなソプラノボイス。
俺の顔を覗き込んだ可愛いらしい笑顔。
あえての敬語を使ってきた彼女に「どうぞお座りください、お嬢さん」と返せば、くすくすと可笑しそうに笑いながら宮さんが隣の席に座った。
俺も可笑しくなってちょっと笑ってしまう。
「同級生にお嬢さんなんて初めて言われたよ」
「俺だって初めて言うたわ」
「ふふ、わたしも何か言えば良かったかな。そこのお兄さん、とか」
「ナンパみたいやな」
「じゃあ…そこの僕くん、とか」
「僕くん、て。俺は何才設定なん?」
宮さんとするとりとめもない会話。
これがけっこう楽しい。
練いわく、俺は宮さんと話している時はよく笑っているのだとか。
こんなふうにクラスでも宮さんが隣だったら良いのに、とふと思う。
1年の頃は同じクラスだったけれど、隣の席になったことは一度も無い。
今はクラス自体が違うから、彼女と隣同士になるなんて今日みたいな日で無いと起こり得ないことなのだ。
だからこそ、何気ないこの時間を大切にしたい。
「北くんと同じクラスだったら、楽しかったんだろうなぁ…」
「!」
「北くんのお隣の席の人がちょっと羨ましい」
眉尻を下げて笑う宮さんの言葉にドキリとした。
果たして、俺はその言葉の意味をどう受け取れば良いのだろう。
友人としてなのか、それとも…
「…宮さんの前だけやで」
「え?」
「クラスじゃこんな喋らへんし、俺の隣になったやつは『つまらんのと隣になってもうた』って顔すんねん」
「そんな、北くんはつまんなくなんてないよ」
「せやから、宮さんだけやねん。俺のこんな顔知っとるのは」
そしてこの先もきっと、俺がこんな気持ちになるのは彼女の前だけだと思うのだ。
「北くんって、ときどきちょっとずるい…」
「ずるい?俺が?」
「だってそんなのこと言われたら、嬉しくなっちゃう…」
両手で自らの両頬をおさえて、ふにゃつきそうになっている顔をなんとか鎮めようとしている宮さん。
その様子がたまらなく可愛いらしくて、宮さんこそずるいやろ、と俺もニヤけそうになってしまった。
いつだって君といたい