隣の席が毎回宮侑になってる



今日は席替えの日だった。
先生が用意してくれた紙のくじを引いて、そこに書かれている番号の席に各々が机と椅子を移動させる。

「なまえちゃん〜、またお隣さんやなぁ」

にこやかな顔と機嫌の良さそうな声。
私の隣に机を動かしてきたのはクラスメイトの宮侑くんだった。
笑顔の彼に対し、私は苦笑いである。
だって彼と隣同士になるのはもうこれで4度目だから。

「侑くん…本当は何番だったの?」
「んー?9番やったけど、鈴木と交換してん。鈴木がな、どうしても9番の席がええっちゅうから」


それは本当なの?と思って鈴木くんの方を見てみると、目が合った瞬間に顔をそらされた。
それから全然こちらを見ようともしない鈴木くんの不自然な様子に、きっと今回も侑くんが無理を言ったんだろうなと察した。

「クラスメイトを困らせちゃダメだと思う」
「だってなまえちゃんが隣やないと俺が困ってまうし。ほら、授業の時とか」
「それは侑くんが教科書を忘れたりするから…」
「しゃあないやんか、毎日くたくたになるまで部活しとるから忘れてまうんやって。ちゅうことで次の英語、教科書見させてくれへん?」

お願い!と手を合わせて頭を下げてくる侑くんに小さくため息。
彼は教科書をよく忘れるから、隣の席の私はその度に自分のものを広げて一緒に見させてあげているのだ。
「もう…次は忘れないようにね」と返せば、パッと頭を上げた侑くんが満面の笑顔でゴチン!と机と机をぴったりくっつけてきた。
毎度のことながら、近いなぁ…と思う。
まあ、ひとつの教科書を一緒に見るわけだから仕方がないのだけれども。

「ほんまなまえちゃんが隣やと助かるわぁ」
「…侑くんは3年生になってクラス替えしたらどうするの?同じクラスじゃなかったらもう教科書は見せてあげられないんだよ?」
「それな!深刻な悩みすぎてハゲそうやねんけど。でも平気やで。その頃には落としたるし」
「?落とす…?」

その言葉の意味がわからなくて首を傾げると、侑くんは私の方を見ながらにフフンと笑みを浮かべて机に頬杖をついた。

「俺の隣はこの先もずっとなまえちゃんだけってことや」
「え…?来年も隣の席に来る気満々なの…?」
「そう言う意味ちゃうけど…まあ、今はそれでええわ」
「…?」

そうして2年生の終わりに、私はこの日の意味を思い知ることとなる。




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