侑の豪速球サーブが顔面直撃



じゃんけんで負けて体育委員になってしまった今年。
定期的に行うことになっている倉庫の備品チェックをしに体育館へ向かうと、中に入ったところで「危ない!」との声が聞こえてきた。

直後、顔面に物凄い衝撃。

反射的に目をつむったけれど、衝撃の勢いに負けて尻もちをついてしまった。
てんてん、と私の顔から落ちて床に転がったのはバレーボール。
どうやら私は練習中であったバレー部の流れ弾に当たったらしい。

「みょうじさあああんッ!?」

それは悲鳴に近い声だった。
鼻の頭を手で押さえながら顔を上げると、猛ダッシュでこちらに向かって来る同じクラスの宮侑くんの姿が見えた。
そして私の目の前で急停止するなり、頭をゴンッ!と床に押し付けて土下座されたから驚いてしまった。

「すんませんっしたあああッ!け、ケガは…!?血とか出てへん…!?救急車呼ぶ…!?」
「だ、大丈夫だから落ち着いて侑くん…」

幸い鼻血までは出ていない。
物凄い衝撃だったとは言え、脳しんとうも起こしていない。
尻もちはついてしまったけれど立てないわけじゃないし、本当にそこまで心配するようなことではなかった。
それなのに侑くんはこの世の終わりのような顔をしている。

「あの、本当に大丈夫だから…」
「でも俺、思っきし打ってもうたから絶対痛かったやろうしっ…」

骨は大丈夫かとか、目はちゃんと見えてるかとか、侑くんは過剰なまでに私の身を心配してくれた。
侑くんはお調子者のイメージだったけれど、実は優しい男の子だったんだなと彼の新しい一面にちょっとほっこり。

「あーあ、侑やっちゃったね。北さん達がまだ来てないからってハメ外しすぎ」
「みょうじさん!大丈夫やったか!?」
「ツムの豪速球サーブ、顔面もろやったろ」

侑くんの後方から数人のバレー部員がこちらの様子を確認しに近寄ってきた。
クラスメイトの銀島くんと1組の双子の片割れ、宮治くん。
それからあと一人は確か角名くんだっただろうか。

「私の方こそごめんなさい、練習の邪魔しちゃって…」
「ちゃう!みょうじさんはなんも悪くない!」
「せやな、悪いのはツムや。ゴリラすぎんねん」
「はあ!?お前もかっ飛ばすことあるやろがい!」

焦ったり落ち込んだり怒ったり。
侑くんの表情はコロコロ変わって忙しない。
そんな彼の顔を見つめていると、パッと私の方を再び見た侑くんが目を見開いてまた悲鳴をあげた。
一体今度はどうしたと言うのだろう。

「あ、あ…あかーんッ!みょうじさんの鼻が…!赤くなってもうてるうッ…!」
「え?ああ、これ…大丈夫だよ。後で保健室で冷やすもの借りるし、大したことないから…」
「大したことあんねん…!女の子の、みょうじさんの顔をキズものにしてもうたんやで…!?」
「そんな大げさな…」

いよいよ頭を抱えてしまっている侑くん。
どうしたものかと思って助けを求めるように銀島くん達を見たら、彼らはまさかの侑くんをフォローするどころか「責任を取れ」とさらに責め立て始めたではないか。

「あの、責任なんて本当に感じなくても…」
「…みょうじさん」
「は、はい」
「みょうじさんのことは俺が責任を持って嫁にもらいます」
「………はい?」
「ずっと好きでした、俺と付き合ってください!」

オナシャスッ!と深々と頭を下げて、目の前に差し出された侑くんの右手。
どういうわけかニヤニヤしている他3人。

え…?何これ…?私はどうしたら良いの…!?

今になって鼻がジンジンと痛みだした。




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