好きな子に童貞を捧げる治



「俺の童貞もらってくれへん?」

この数分前。
私は治くんに呼び出されて「なまえちゃんのことが好きや」と面と向かって告白をされた。
実は前から密かに私も治くんと同じ気持ちであったから、これは夢なんじゃないかと思うほどにたまらなく嬉しくて、喜んで彼の告白を受け入れたわけなのだけれども。

ドウテイ…、えっ童貞?

ええっ!?治くんってそうだったの…!?

好きな人と彼氏彼女の関係になれたと言う幸せがどこかに吹き飛んでしまうぐらい、告白の直後に治くんが放ってきた言葉は衝撃的なものだった。
だって双子の片割れの侑くんがあんな感じだから、てっきり治くんも恋愛経験は豊富なんじゃないかと思っていたからだ。

「男の立場で申し訳ないんやけど、最初は下手やと思うから大目に見てほしい。あと色々教えてもらえたら嬉しい」
「あの、こちらこそ申し訳ないんだけど…私もその、初めてで…」
「えっ、そうなん?」

驚いたように丸くなった治くんの目。
その反応は何だろう、もしかして私はそんなに遊んでいるように見えていたのだろうか。

「マジか…じゃあ、処女ってことやんな?」
「う、うん…ごめんね、ガッカリさせちゃったかな…」

あの数分前の幸せはどこへ行ってしまったのだろう。
今ではいたたまれない気持ちでいっぱいになっている。
もしかしたら治くんは経験が有りそうな女子を捕まえて脱童貞を狙っていたのだろうか。
そうだとしたら自分では彼の期待に応えてあげることができない。
ああ、なんだろうこれ、悲しいし申し訳ない。

「ガッカリなんてせぇへんよ。むしろ安心したわ」
「えっ…?」
「初めてさん同士、一緒に勉強してこうや」

穏やかに、そして嬉しそうに笑う治くん。
思わずキュンとしてしまった。
それに今ので彼は脱童貞のためだけに告白してきたわけでもないのだと確信できた。
だって体目的なら未経験の女子を相手にしようなんて面倒なことはしないと思うから。

でもそう思うのに、私はやっぱり聞いてしまうのだ。

「本当に私で良いのかな…」
「おん、なまえちゃんがええねん」
「そ、そっか…なんか、治くんが私のこと好きだなんてまだ信じられなくて…」
「ほんまにむっちゃ好きやで。なまえちゃんになら俺の人生あげてもええもん」
「えっ、人生…?」

目を丸くして治くんの顔を見上げる私。
彼の大きな両の手のひらがギュッと優しく私の手を祈るように包んで握った。

「せやから、なまえちゃんの人生も俺にください」

この日を境に私と治くんはお付き合いを始め、それから数年後には結婚まですることになるのだった。




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