両思い(勘違い)にテンアゲしてる侑
「なあ、みょうじさんのこと好き言うたらどうする?」
なんの脈略もなく投げかけられたその質問に私は目を丸くして隣の席の宮くんを見た。
もうすぐ朝のHRが始まる時間だけれど、まだ担任の先生は来ていないから教室内はガヤガヤしている。
「えっと、誰が私を…?」
「俺がみょうじさんを」
宮くんが…?私を…?好き…?
突然のことに思考が一瞬フリーズしてしまったが、すぐにこれは「もしも」の話なのだと察して心を落ち着かせた。
だから私もそう言うノリで笑ってこう返したのだ。
「私もそうだよって言ったらどうする?」
「え!?ほんまに!?」
「えっ?」
「やばい、めっちゃ嬉しい」
頬をほんのり赤く染めて、口元を片手で覆いながらも目をキラキラさせている宮くんはさながら恋する乙女のようだった。
一方、そんな予期せぬ反応をされて私は困惑を極めるばかり。
「みょうじさんもそうやったなんて知らんかった」
「ええと、宮くん…?」
「あかん、ほんまに嬉しい。今すぐ抱き締めたい」
「!?だ、誰が誰を…?」
「だから俺がみょうじさんを」
待って。
今物凄く大変なことになっている気がする。
別に宮くんのことは嫌いじゃないけど、でも特別にすごく好きとかそう言うのでもない。
それは宮くんだって同じだったはず。
一体いつ彼が私を好きになったのか全くわからない。
「あの、宮くん…」
「侑くんでええよ?俺もこれからはなまえちゃんって呼ぶから」
どうしよう。
凄い勢いで間違った方向にことが進んでしまっている。
早く誤解を解かないといけないのに、目尻をたれ下げて幸せいっぱいの顔で笑っている隣の彼を見たら、今さら「冗談だよ」なんてとてもじゃないが言える気がしなかった。
私の良心が無理だと悲鳴をあげている。
「あの…あのね、宮くん…」
「侑くん」
「………侑くん」
「やば、めっちゃキュンときた。もっかい言って」
「あ、侑くん…?」
「あかん、好きすぎる。今すぐキスしたい」
「!?だ、だめ!」
「ほんなら後で二人っきりになった時にしよ」
「だめ!絶対だめ!」
「絶対!?なんで!?」
そんなに拒否ることないやん!と泣きそうになっている侑くんに私はこれからどうしたら良いのかと頭を抱えた。