02
なかなか寝付けなかった夜。
でもいつの間にか眠っていたようで、朝起きたら部屋に一人だった。
………んん?
サムのやつ、どこ行った…?
ふと時計が目に入った。
時刻は7時半。
は…?
はああああっ!?
「アカーーーン!!寝坊したーーー!!」
部屋を飛び出し、リビングへ駆け込む。
なんで起こしてくれなかったのだとオカンにキレようとしたが、居ると思っていたオカンすら居なかった。
机の上には弁当と置き手紙がある。
『お母さんは早番なので適当に朝ごはん食べといてね。お弁当は作ってあるから各自忘れずに持って行くように』
まさかの早番。
うちのオカンはパートとして働いているのだが、たまに朝早くからのシフトがあったりするのだ。
それが今日だったわけである。
オトンも当たり前に朝早くに出社しているし、なまえちゃんも居ない今、この家には俺とサムしか残っていないはずだった。
それなのに片割れが居ない。
弁当が俺の分しか無いと言うことは、もうアイツは家を出たと言うこと。
「おいゴラァ!!なんっっっで一人でさっさと登校しとんねん!!俺を起こせや!!」
『はあ?起こしたし。俺、今日日直やから先行く言うたやん』
とりあえずサムに電話してカチキレた。
それからはマッハで支度して弁当をエナメルに突っ込んで家を飛び出した。
通学路を全力で走りながら思う。
なまえちゃんが居てくれたらって。
俺の毎日の平穏はなまえちゃんが居ることで守られていたのだとつくづく実感させられた朝だった。
結局、時間に間に合うことができなかった俺は遅刻となり、先生に怒られた。
朝飯も食わずに出て来たから午前中の授業はずっと腹の虫が騒いでいて、クラスの連中に笑われて恥ずかしい思いもした。
もう散々だ、嫌になる。
でも、それもあと少しの辛抱だ。
なまえちゃん、学校来とるよな…
はよ会いたいな…
今からでも行ってええかな…
授業が終わって、昼のチャイムが鳴る。
俺は弁当片手に席を立つと、駆け足で教室を飛び出した。
だが、廊下で今朝会わなかった片割れとはちあう。
「なんやねん、お前もかい」
「そらこっちのセリフやわ」
やっぱり俺らは双子なのだ。
考えること、行動すること、全てが笑えるくらいにドンピシャ。
だからこの後も思うことは同じで。
「俺が一番になまえちゃんに会うねん!」
「アホ抜かせ!俺が先に姉ちゃんに会う!」
二人で競い合って走る廊下。
走るな!との先生の怒鳴り声が聞こえてきたけど、俺らの足はもう止まらなかった。