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高校1年の1月。
春高に出場する稲荷崎高校は東京体育館に集っていた。

「ツム、お前さっきからソワソワしすぎやろ。便所行きたいならさっさと行ってこいや」
「便所行きたいのとちゃうわ!俺は春高の空気吸って高ぶってんねん!」

全国から猛者達が集まる舞台、春高。
東京のこのどでかい体育館でバレーができる喜びに感動すらしていたのに、俺と同じ顔を持つ片割れのサムが水を差してきた。

「ツムくん、サムくん。そろそろ着替えてアップに入るけど大丈夫?」
「!なまえちゃん」
「姉ちゃん、ツムが便所行きたいって」
「だから!ちゃう言うてるやろがい!」

俺の話を聞かないサムの背中をどつくと、なまえちゃんが小さく笑った。
なまえちゃんは俺とサムのお姉ちゃんで、稲荷崎男子バレー部のマネージャーをやっている。
選手とマネージャーで立場は違うけれども、こうして姉弟揃って同じ舞台に来れたことはとても嬉しい。

「おいサム」
「なんや」
「今日も勝つで」

俺の言葉にサムは眠たげな目を軽く見開くと「おん、当たり前や」と笑った。
互いの拳をトンッとぶつけ合う。

今日も明日も全部勝って、俺らが一番になんねん

ほんで、その一番を大切なお姉ちゃんにもあげるんや





「…なあ、あれって宮兄弟じゃね?」
「ほんとだ、確かあの兄弟ってまだ1年だったよな?なんかもうオーラが普通じゃねぇわ…」
「イケメンでバレーも上手くて双子って、どんだけハイスペックだっつーの…」

ユニフォームに着替えてコートに向かう途中、周りからいくつもの視線感じた。
1年でユニフォームをもらい、試合にも出ている俺ら兄弟のことを注目している人間は多い。

フッフ、最強ツインズのお通りやで〜

「稲荷崎ってマネージャーも可愛いよな」
「そうか?まあ、悪いとは言わねぇけど」
「ガード緩そうだし、声かけたらいけんじゃね?」

………は?

思わず反応した俺の耳。

「…サム」
「わかっとる」

俺が言わんとしていることを察したサムがなまえちゃんのそばに行って、その姿を隠すように壁になる。
「あー…」と残念そうな声を漏らす奴らに俺は振り返って、ギロリと睨みあげた。

おい勝手に見てんなや、潰すぞ

「ヒィッ…!」
「怖ッ…!」
「さ、サーセンッ…!」

そいつらは瞬時に顔色を変えて早急に立ち去っていった。

「二人ともどうかしたん?」
「なまえちゃん、東京は怖いとこや。一人になったらあかんで」
「え?」
「せや。どっか移動する時は俺ら、もしくはうちのバレー部の誰かを連れて行き」
「?うん、ツムくんとサムくんがそう言うなら…」

不思議そうに首を傾げるなまえちゃんを今度は俺とサムで間に挟んでがっちりガードしたのだった。




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