ラブステップを街中で
部活の無い休日。
今日はなまえ姉とショッピングに来ている。
つまりデートだ。
「なまえ姉、これにしようよ。絶対似合うと思う」
「わあ、可愛いワンピースだね。試着してみようかなぁ」
「うん、しよう。荷物は俺が預かっとくから、着れたら呼んで」
なまえ姉の背中を押して試着室へ。
俺はもちろん外で待機だ。
なまえ姉が着替えている間スマホをいじっていると、ショップのスタッフが「彼女さんの荷物持ちですか?大変ですね」と声をかけてきた。
だから俺は「好きな人のためならこれも楽しいですよ」と返してやった。
確かに世間一般では、男は彼女のショッピングに付き合うのは一苦労だと感じている場合が多いだろう。
俺だってこれがなまえ姉じゃなかったら面倒だと思う。
でもなまえ姉のためなら全然苦じゃない。
むしろショッピングに俺を連れて来てくれたことに感謝しているぐらいだ。
だってなまえ姉に可愛いものを選んであげられるし
俺が選んだものをなまえ姉が着てくれるなんてめちゃくちゃ嬉しいじゃん
「倫くん、着てみたけどどうかな?」
「!」
試着室の扉が開いて、俺が選んだワンピースに着替えたなまえ姉が出てくる。
かっっっわ…!!
「サイズぴったりだった」とふんわり笑うなまえ姉はもはや天使だった。
「めちゃくちゃ似合う、可愛い、マジで可愛い」
「ほんと?倫くんのセンスが良いからだね。選んでくれてありがとう」
こんなふうに俺のおかげだと言ってくれるなまえ姉の優しいところが好き。
それが気を使ったりしているわけじゃなく、本心の言葉だから尚更だ。
俺の自慢の大好きなお姉ちゃん。
俺はこの人を一生守っていきたい。
「素敵な彼氏さんですね」
ワンピースの会計をする時、レジに入った先ほどのスタッフがなまえ姉にそう声をかけていた。
一瞬きょとんとしたなまえ姉だったけど、すぐににこりと笑って「はい、自慢の彼氏なんです」と返していたから、俺はちょっと驚いてしまった。
「…あのさ、なんで訂正しなかったの?」
「うん?嫌だった?」
「いや、それは全く。むしろ俺は嬉しかったけど、なまえ姉は良かったのかなって思って…」
ショップを出たあと、なまえ姉にさっきのことを聞いてみた。
俺はなまえ姉のことがちゃんと女の子として好きだから、周りにカップルだと思われても全然良いと思っている。
でもなまえ姉はどうなんだろう。
俺と同じ気持ちだったら嬉しいけど…。
「だって今日はデートでしょう?」
「えっ?」
「今日一日はお姉ちゃんの彼氏でいてね」
「!」
今日一日は、なんてとんでもない。
「ずっと彼氏でもいいよ」
「ふふ、ありがとう。倫くんは優しいね」
「もしかして冗談だと思ってる?俺は本気だからね」
荷物を持っていない方の手でなまえ姉の手を握る。
するりと指を絡ませて恋人繋ぎにすれば、なまえ姉は目を丸くして俺を見上げた。
「彼氏なんだからいいでしょ?」
「いいけど…なんだか照れちゃうね」
そう言って頬をほんのり赤くしてはにかんだなまえ姉に胸がキュンとする。
「ねえ、キスしていい?」
「えっ?」
「彼氏なんだからいいでしょ?」
「倫くん…それ言えば許してもらえると思ってるでしょ」
「バレたか」
もう、と困ったように眉尻を下げて笑うなまえ姉。
とりあえず今は我慢するけど、家に帰ったら絶対してやろうと思った。
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