繋がる糸

戦時中パロ?




「必ず人は誰かと赤い糸で繋がっているんだって!」

私が真新しい本を抱えながら
一郎太の元へ駆け寄る。
一郎太は私の言葉にきょとんとしてた。

「赤い糸…?」
「そう!小指には見えないながぁーい赤い糸が結んであって、その先には必ず運命の相手と繋がってるんだって!本に書いてあったの!」

じゃーん、とさっき友人に借りた本を見せびらかす。
が、

「お前、字読めたっけ…?」
「むっ!!よ、読めないに決まってるでしょ!!学校いけない家庭なんだから!」

私の家はお金がないし、兄弟も多いから学校に通えない。
けど、ご近所さんの一郎太はお金持ちだし兄弟も少ないから学校に通える。
羨ましいけど、これが現実。

「この本で読み書きの練習をするんだ!!」
「…一人でできるのか?」
「一郎太に教えてもらう!」
「…やっぱりか…」
「あぁ!!ため息吐かないで!?」


二人で笑いあった後、一郎太が突然小指に何か付けてきた。

「…糸?」
「今、この色しか持ってないから…赤い糸の代わりだからな!!」
「わぁ夕日みたいな綺麗な緋色!!」
「だろ?…よし、俺も付けた。
皆赤じゃ、紛らわしいからな。
俺等はこの色の糸で
結ばれてるってことで!」
「え?」

それって…と言おうとした瞬間、

かしゃんっ…

「え、えぇぇええ!?」

一郎太はなんの迷いもなく繋がっていた糸を真っ二つに切り裂いた。

「この先は俺と見えない糸で結ばれてるんだよ」

じゃあな!と風のように去る一郎太…

「縁起でもないことしないでよ…」

ふう、と溜め息を吐くも心は暖かかった。


次の日、私は絶望に堕ちた。

『名前、ごめんな』

一郎太が戦争にでる。
嘘だ。そんな、はず…ないでしょ?
嘘、嘘、ウソ、うそ…!!


数日後あの約束したときよりも戦争は酷くなった。
悲しくも私の町に残っていては危険すぎるからという理由で遠い町に来た。

兵隊さん達も結構いるから安全だという理由だったけれど、それがいけなかった。

嫌なサイレン音が響く。

空襲だ。

「名前!こっちよ!!」

一朗太、一郎太、一郎太…!!
助けてよ…!

足を必死に動かし走る。
一番大きくて安全な防空壕が見えてき、

「あっ!!」

誰かに押された。ぐらり、体が傾く。


死ね、ってこと?
女子供は必要ない、
って聞いたことあるけど…

地面に体が叩きつけられる。
家族が…、いない。

そんな…

もう、いやだ…
しんじゃいたい…
涙が止まらなくなって
ゆっくり目を瞑る。


いたい、あいたい、

…会いたいよ、最期に逢いたかった
一郎太…


「大丈夫か?」


灰色の空に青が見える。
軍服の、青い髪の男性…

「一郎太!!」


バッと立ち上がる。と…


「いちろうた!ふせてぇぇえ!!」

相手国の兵隊が
こちらに銃を向けていた。
私は一郎太を抱き締めるように庇う。




悲痛な叫び声と破裂音。
名前は風丸を抱き締めたお互い地面へと引き付けられるように倒れていく。


「…ち、ろお…た…」
「……名前…」

遠くで撃った兵隊は日本兵に捕まっていた。

弾は二人を貫通。
血は止まることなく体温を奪い続けていた。

「…やっと会えた…な」
「うん…」

二人はそっと小指を結んだ

「見えない糸…必要なかったね」
「ああ…」


「…名前…」
「ん?」
「愛してる」
「…一郎太…。私も。」

お互い手のひらを合わせるとゆっくり唇を重ねた。


「ずっと、一緒だ…」
「うん。」


緋色の光が町を照らす中、
二人は目を閉じた…






「はじめまして、名字名前です。
今日からサッカー部マネージャーをさせていただきます!」

ペコリ、頭を下げる少女の小指にオレンジの指輪がはめられていた。
俺の髪留めと同じ色。
運命を感じるな、なんて…な。

「よろしくね、風丸君!
 あ、早速だけど勉強教えてよ!!」


なんかデジャヴを感じる…


今日はおかしい。
だが、不思議と嫌な気分ではなかった。





2011/05/07



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