不機嫌な理由は教えられません

例え君が謝っても僕は許さないよ、だって悪いのは君たちじゃないか。許すか許さないかを決めるのは僕の自由だよ。

「樹ー?」
「何」
「なんでおこってるの」
「知らない」

知らなくなんかない。本当は今すぐにだって理由を話して反省させてやりたいくらいだ。

「樹、」

何度呼ばれたって僕、許さないよ。

「樹ー…」

悪いのは君だ。人のこと考えもしないで…

「いーつーきー!」

突然の頬の痛みに顔を歪める。ちょっとこの子いつの間に暴力的になったのさ。

「いひゃい」
「だって無視するし目合わしてくんないんだもん」

あんまり引っ張らないでよ痛いから

「樹なんで怒ってるの」

手放してくれないと喋れないし
そう目で訴えるとパッと手を離してくれた。しかも悲しそうに。

「私のこと嫌いになったんだ」
「は?」

なんでそうなるの、僕は名前のこと好きだし。

「いーよ、別れよっか」
「なんでそうなるの」
「どうせ私のことなんか好きじゃなかったんでしょ」
「え、ごめんちょっと意味がよくわからない」

なんで別れなきゃならないのさ。

「私そこまで鈍感じゃないし。さっきだって私が雪村君の手当てしてるとき睨んできたじゃん!!」
「気づいてたんだ」
「っ!!」
「そりゃあ、ムカつくに決まってるでしょ」

「彼女が他の男とあんな至近距離で楽しげに話してたらさ」


「…え?」
「何。」

きょとん、としちゃって…
一体何なのさ

「んーん、何でもない」
「…」

嬉しそうなヘラッとした顔が気に入らない。

まったく。
僕はつくづく名前に甘いみたいだ。






不機嫌な理由は教えられません

(そっかそっか、樹が嫉妬かー)
(ん、何?呼んだ?)
(うんん、樹、大好きー!)
(な、何急に!)





2012/07/07作品



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