やっぱり

深夜0時。

何気なく目に入った時計の秒針が12を指したのを見て、自分が遅くまで起きていたということに今更気が付いた。

明日はユノちゃん達とスワローに行く約束をしているので早めに寝なければいけないのに…
ついつい師匠に勧められた本を読んでいたら時間を忘れてしまった。
こういうところが自分の悪い癖だな、と苦笑いしつつ栞を挟み、ベッドへ向かおうと席を立った瞬間、窓を何かが叩く音がした。
風とは思えない、リズミカルなコンコンッという、…まるでノックをするような音。

カーテンを閉めている為外に何がいるかはわからない。でも、叩く音は止まない。

仕方が無い。

恐る恐るカーテンを開くと、そこにいたのは

「ハルキ君!?」

なぜこんなところに、なぜこんな時間に、いろいろと疑問は浮かぶが今はそれどころではない。

「窓、開けるね!」

窓を開くと勢い良く飛び込んできたハルキ君。突然のことで彼を受け止め切れず一緒に床へ倒れてしまった。
それと同時に香るハルキ君と花のにおい。

「誕生日おめでとう、名前」

綺麗な花と共に降ってきた優しい声

「ん?」

今日はなんの日?

「…あっ…今日私の誕生日だった…」
「忘れていたんだな…」

だろう思った、と苦笑いを浮かべるハルキ君。そんな彼もかっこいい…
ついつい見惚れていると、そっと私の両頬に手が添えられる。

「一番に、名前におめでとうを言いたかったんだ。」

「だが、女子寮に立ち入ることは許されないからな…」

ありがとうとか、窓からは危ないからやめなさいとか言いたいのに、簡単な返事すらできないくらいの近距離。
ハルキ君の吐息が触れる度ドキドキしてしまって何も言えなくなる。

「そんな顔しないでくれ」
「えっ」

どんな顔?
そう問いかけたかったが彼自身によってそれは阻止されてしまった。阻止と言っても、どちらにせよ喋ることはできなかったのだけれど。
恥ずかしくなるようなリップ音が聞こえて離れていく彼の体温。

「キスして欲しそうな表情だったぞ」
「そんなこと…!」

冗談だ、そう笑う意地悪な彼にまた心臓が高鳴る。

「とりあえず、今夜は祝いの言葉と、花束を渡しに来たんだ。」
「それは嬉しいけど…危ないことはしてほしくないな」

委員長のくせに…そう可愛くない素直な気持ちを伝えると、すまない、と短い謝罪の後にまた軽いキスをされた。

「ちゃんとした祝いはまた明日にでもさせてもらう。突然すまなかった」

ハルキ君は床に倒れたままの私の手を引いて座らせると、ぎゅっと力強く抱き締めてきた。

「名前、生まれてきてくれてありがとう。愛してるぞ」

耳元でそう呟くとスッと立ち上がった。

「来たばかりだがそろそろ部屋に戻る。早めに寝なければきっとスワローでバテてしまうからな」

ユノのことだからこういうことは相当派手にやるだろう、それは私にもわかる。

「って、ハルキ君なんでそれを知ってるの?」

ユノちゃん達の話では女子だけで行くみたいだったんだけど

「知っているも何も提案者は俺だ」
「え、それはどういう…」

ハルキ君は私の質問に対し何も答えず窓からパッと消えてしまった。

だから危ないって!
外を見るとハルキ君の走り去る姿が暗闇の中でうっすらと見えた。

「もう…」

仕方の無い人なんだから…

いつもは冷静で優等生な姿を見せているのに、私の前では意地悪な笑みや大胆な行動をしてくれる。
そんなハルキ君はどんどん私を虜にしてしまう。

…いつも彼のペースに飲み込まれてしまっているのはちょっと悔しいから、今度仕返しでもしてみよう。


窓とカーテンを閉じ足元に散らばる花を見る。
まったく、後片付けが大変じゃない…

そんな花の中に光る何かを見つけた。

「指輪…?」

シンプルなそれは、ネックレス用のチェーンに付けられていた。

学校でも制服の下に付けていればばれないってこと…?
本当にずる賢いんだから……

そんな彼の事を考えると自然と口元が緩んでしまう。

花を一つに纏めコップに挿すと彼からのプレゼントを握り締め眠りについた。


明日のサプライズ楽しみにしていよう、大体想像がつかなくもないけれど…

沢山の幸せな気分の中、微睡みの中に意識を落としていった。





翌日、想像の斜め上を行くサプライズを受けびっくりしたのは、また別のお話……。






やっぱりキミが好き.







お友達に捧げた小説。お誕生日おめでとうございました。
2012年作品



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