別に餌付けで釣るつもりはないメイス

「お腹が空いた」
 ボソリとベッドの中で呟いたら、寝惚けたメイスがパッと目を開いた、ような気がした。昨夜メイスに付き合って一夜明けたわけだけど、腕がとても痛い。寝返り、打てなかったのかな。そう思ってたら、メイスが髪を掻き上げてきた。額が寒くなって、軽くキスを送られる。癖なのだろうか。そう思ったら、ベッドから出た。
 メイスの出た分、とても寒い。メイスが出たのを見計らって、布団を独り占めする。すると「さびぃな」といいながら着替え始めた。全裸、じゃん。ほぼ。
(なにかしたっけ)
 昨夜一晩付き合った、というのしか覚えてない。約束は果たしたけれど、その一晩のうちになにをしたのかということは、よく覚えてない。お酒でも飲んだのだろうか? 頭を押さえて軽くうつ伏せになったら、腰がズキリと痛い。痛みの原因を探してたら、メイスが着替え終えた。そのまま部屋を出る。いったい、なにをするつもりなんだろうか。どうせなら、部屋を温かくしてから行ってほしかった。暖がほしくてモゾモゾしていたら、ベッドの上から、なにかが落ちた。
(なに……?)
 と思いつつも二度寝する。スゥっとベッドを独占していたら、パンの焼ける音がした。チンと音がする。それから暫くして、扉が開く音がした。パタパタと、スリッパが足から離れる音がする。美味しそうな匂いが徐々に近付いてきて、カタンと音がした。近くの棚に置いたのかなと思う暇もなく、体を揺さぶられる。
「ほら、作ってきてやったぞ。食え」
 どうやら食事を持ってきてくれたのらしい。まさか、作ってくれたとは。モゾリと起き上がると、部屋の寒さが肌に直接きた。
「さむっ」
「冬だからな、もう。ほら、温かくしろ。毛布でも被っておけ」
「服は?」
 毛布を体に巻き付けてたら、プイッとメイスが顔を逸らした。おい、答えないのかよ。どういうことなんだよ。そう思いながら、作ってくれたものを受け取った。焼いたサンドイッチだ。具材も加熱したものもあれば、パン自体がトーストになっている。トースト・サンドイッチ? よくわからない。疑問が付かないまま、ベッドの上でサンドイッチを食べた。
 サク、サクと齧ると、レタスとマスタードの味が広がる。ついでにベーコンの旨味も。けど、焼いたからか。パン屑がポロポロと落ちた。
(あぁ、ちゃんと。あとでローラーをしておかないと)
 寝惚けながらサンドイッチを食べてると、メイスの視線に気付く。もしかして、食べたかったとか? でも残念。もう残り一個だ。それに齧っちゃったし。
 食べた一口を口の中で細かくしながら、食べ差しをメイスに見せる。
「食べたかったの?」
「いや。お前が全部食え」
 さっきの柔らかそうな視線はどこに行ったんだよ。そうツッコミを心の中に仕舞いながら、お言葉に甘える。けど、さっきの普段の目付きはどこへやら。また目尻が垂れたような感じになっていた。いったい、なんなんだろうか。よくわからない。
 そう疑問に思いながら答えを探してたら、もう食べ終える。皿は空だ。指にはソースやパン屑が付いている。それをペロペロと舐めてたら、メイスが腕を引っ張った。
「なに」
「来いよ」
 そういわれて、空の皿も取り上げられたから、それに従うしかない。メイスの膝の上に立たされる。膝立ちの形だ。ボーッと、なにをするんだろうかと見る。毛布が肩からずり落ちそうで、寒い。
 スッとメイスが毛布を肩に掛け直してくれる。それから毛布の両端を握ったまま、首とか胸にキスを落としてきた。それだけだ。軽く唇を寄せて、キスを首や胸の周辺に残すだけ。
(いったい、なにをしているんだろう)
 メイスの髪が顔を擽り、耳の下にもキスを落とす。そして首の付け根から胸に向かって、また往復しながらキスを落とした。お腹にもされる。それらをやること、数回。次はベッドに寝かされた。うつ伏せにされて、背中にもキスを落とされる。軽く唇で触れるだけ。それしかしない。
(いったい、なにをしたいんだろう)
 そうしたいのなら、すればいいけど、いったい、なんで。そう思いながら寝返りを打つと、メイスに足を開かれた。ガシッと膝を持ち上げられる。そのまま足の付け根に近付いて、吸い付いた。唇を、触れるだけのとは違う。ちゅうっと音がしてきた。
「ん」
 鼻にかかる声が自然と出てしまう。ちゅ、ちゅっと腿の付け根から太腿の内側まで、ビッシリとキスを落とされる。もう片方の足にも、同じようにされた。
(あ、なんか、変な気分になってきた。ヤバい)
 クラクラとしてきた頭に、ギュッと目を瞑る。そうしたら、足の間でメイスが「もう一戦するか?」と尋ねてきた。ゲームでも、あるまいし。それにブンブンと首を横に振ったら、気落ちした声で「そうか」とメイスが返してくるのであった。


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