盲目を撃て

 紅茶の葉の種類を知らずに飲む。これは酸味があって、これは苦味が強い。そっちはコクが強くて、これは薄い。そんな飲み比べをしていたら、メイスが呆れた。
「それ、全部飲むつもりか?」
「その通り」
「なにか一緒に食った方がいいだろ。ほれ、ななし」
 これ食え。といってゲーラがビスケットを差し出してくる。クッキーの方が、甘くて好きだけど。その好意に甘えて、一口齧る。
「しょっぱい」
「そりゃ、ビスケットだからな」
「クラッカーもあるぜ?」
「紅茶っていうと、お茶会のイメージもあるのに」
「残念ながら、朝食に飲むこともある」
「ケースバイケースってヤツだな。ジャムも入れちまえよ」
「どれが一番美味しいかな」
「それは、好みにもよるだろう」
「濃い目のに入れるのもいいぜ」
「というかメイス、全然飲まないよね」
「そういう気分じゃないからだ」
「んぁ? 珈琲の気分ってか」
「そういうところだ」
「へぇ」
 珈琲党は、摂取するカフェインにもこだわりがあるのらしい。ムスッとしたメイスとは反対に、ゲーラは残りの紅茶を飲み進める。それ、あとで飲むつもりだったのに。
「私の分」
「ん」
「それ、ゲーラ」
「甘いぜ?」
「ジャムをたっぷりと入れていたからな」
「メイスは?」
 無言で缶珈琲を見せてくる。インスタントので、充分なのだろうか?
「せめてドリップで淹れればいいのに」
「インスタントに済ませたいだけだ」
「ふぅん」
「クラッカーも合わせると美味ぇな」
 パリパリと袋の中が減る。うかうかしてると、私のもなくなりそう。ヒョイッと一枚を抓んで、口に入れる。パリッと乾いた味がした。
(塩味)
「ゲーラ。それ、くれ」
「おう」
 ビスケットが渡った。


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