欠けたコンクリート

 リオをリーダーに置いたマッドバーニッシュの再結成から数日後、我々バーニッシュの国の礎となる場所を発見した。私が見つけた高速道路の壊れた感じとなんか似てる。けどリオがいうには「建設途中の高架だ」という。こうか。硬貨? 頭を傾げていたら、メイスが「『高い橋』という意味だ」と教えてくれた。なるほど、高速道路と変わらない。
「しかし、コレをどう使うんで? 真上に国を建てるんで?」
「いいや。道路の上に国を興さない」
「では、中で?」
「その通りだ」
 だったら問題はどうやって中に入るかだけど。そう思ったらリオが解決した。炎の階段を作り、それを上る。
「これ、外へ調達する際に作る必要がありますね」
「その時は僕も出るから必要ない」
「いや、それだとリオの休まる暇が」
「そうだぜ。いくら強ぇっていっても、休むときに休まねぇと体壊しちまう」
「リーダーが倒れたら元も子もない。それに、前回の件がある。ここを守る誰かを残さないと」
「心配されるほど柔じゃない。日が落ちたら火を消すよう心がければ外からは見つかりにくいだろうし、数人でいい」
「じゃ、二手に分かれますか」
「あぁ。外の方が危険が多いからな。力のある者が調達をして、次にある者が中で」
「じゃぁコイツらだな。後はどうする?」
「中を見ないとわからないが、人手が多い方がいいだろう」
「それに大所帯で動くより少人数の方が何かと都合は良いし。中に人を割こう」
「賛成だ。荷物が多ければ、僕の力でどうにか持ち運べばいい」
「リーダー。アンタにだけは任せられないぜ」
「俺たちも協力できることがあったらするぜ」
「殿は得意だから!」
「お前たち。まぁ、参考にはさせてもらおう。とりあえず、中の状況だが」
 リオが先に入る。私たちも続けて入る。埃っぽい臭いがした。コンクリートの粉がチラチラと、日に当たって見えた。
(結構、人が入ってなさそうだ)
 ケホッと咳をすれば、チチチとネズミの影が見えた。
「先住民がいるようですね」
 メイスがいう。
「穀物を盗み食いしたり疫病を運んだりするからな。食べるのに問題がなければ食おう」
「へい」
「問題は、疫病の有無をどう調べるかだけど」
「そこらの犬に食わせるか」
「メイス。それだとわんこ可哀想」
「わんこ」
「わんこねぇ」
「なに」
「別に? なぁ」
「あぁ。特になにも」
「なぁんか引っ掛かるなぁ」
「ネズミの天敵でも持ち込めれば楽なんだがな。餌代も浮くし」
「リオ。もしネズミが疫病を持っていた際、猫は」
「腹一杯食わせることができれば、オモチャにして嬲り殺しにするしかしない」
「そう。なるほど」
 それなら安心だ。
「いや、猫一匹を満足に食わせられる状況か?」
「確かに。市販のペットフードはともかく、餌はネズミしかいないぞ?」
「ネズミ対策は追々考えるとしよう。もしかしたら、食糧を缶に入れるだけで済ませられるしな。さて」
 長い回廊が終わる。チラチラと日が差し込んでいた薄暗い場所と比べ、少し明るい。それに、心なしか廃材も少ないように見える。作りはしっかりしているんだろうか?
「向こうまで歩いてから、拠点を決めるか。途中で崩れたら敵わん」
「はい」
「へい。で、他に作るんで?」
「いや。一先ずは、ここを中心にしようと思う」
「他にも同じようなのは見えるけど、ですか」
「あぁ。もしここが崩れる様子があれば、次の高架を見よう」
 つまり、数ある内のコレに目を付け、不要なものであれば他のものを見て検討をつけると。
「わかりました。じゃぁ、ぞろぞろといってもなんですし、二手に分かれます?」
「向こうを見る方と、ここを片付ける方か」
「少しは掃除した方がいいもんなぁ」
「それに状況も確認した方がいい。メイス、その辺りはできるか?」
「崩れる心配がないか、ですね? えぇ、目星は粗方」
「なら任そう。ついでにゲーラ、お前はメイスの指示の下、彼らを指示してくれ」
「わぁかりやした。コイツらの世話は任せてくだせぇ」
「じゃぁ、万が一に備えてリオと一緒に行く」
「そうしてくれ。マンツーマンだと何かあったときに助かるからな。じゃぁ、頼むぞ」
「サボらないでね」
「サボるかっつーの」
「ヘマをするなよ」
「誰だと思ってるの」
 少なくとも、ゲーラやメイスよりやる自信はある。そんな軽口を叩いてから、その場を離れる。後ろから、仲間に指揮をするゲーラの声が聞こえる。相変わらず、声が大きい。
「お前は」
 リオが話しかける。
「ここだと、他のバーニッシュたちが静かに暮らせると思うか?」
「そりゃぁ」
 その質問に、思ったことを話す。
「フリーズフォースのやり方は、一度対戦したのはあれっきりですし。襲撃を受けたのも、二人の情報からしかわからない。けれども」
 多分、二人が逃したはずなのにいつのまにか数隻が彼らを捕らえていたということは。
「熱。熱で我々を判断しているとしたら、火山が近くだといいんじゃないんですかね」
「そうか」
「バーニッシュも元気になるし。『木を隠すなら森の中』もできますし」
「そうか。そう、気楽に行ければいいんだがな」
「そう不安なら、遠回りになるけど幾つか別ルートを作ればいいんじゃないかと。そうすれば途中で巻けるし、直線で進むよりはわかりにくい」
「お前は」
 話に割りこまれたので黙る。
「それを込みで、自分が『囮になる』と言い出したのか?」
「あー」
 それは、うん。はぐらかしたいけど、絶対後で大変なことになる。予断を許さない瞳で、肩越しにこちらを見てきた。
「まぁ、うん。とりあえず目立った方が、敵の目も引きつけられるし」
「それでゲーラとメイスは失敗を犯した。それでもか?」
「あの二人は、敵の戦力を舐めてたから、うん。だから甘かった」
「自分はできるとでもいう口振りだな」
「まぁ、できるから」
 そうボヤくと、リオが黙る。
「あ、別に逃げ道を塞ぐとかだから。相手の。それで追手を撒くという」
「あぁ、わかった。意外と、お前が無茶をするヤツだということはわかったよ」
「リオも、無茶をしないようにね。リーダーなんだから」
 そもそも、トップが戦場に立ったりすると、最悪士気が落ちかねない。
「あまり、無謀なことをしないでね」
 そう口出すと、沈黙のあとに「善処しよう」という前向きな言葉が返ってきた。けれども。
(表向きは、だけなんだろうなぁ)
 口ではいっても、腹の内では認めてなさそう。
 新リーダーが無茶をする傾向を見ながら、ゲーラとメイスに話すことを考える。どう、この新リーダーの無茶を止めるべきか。
 そんなことを考えていたら、光が見えてきた。


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