バレスの一角(消火後)

 睡眠時間が短いと、どうも眠い。大きな欠伸をするななしに、アイナが注意する。「ちょっと、ななし。そういうのは業務に差し障りが出るんだから、ちゃんと寝てよね?」心配も含んだ注意に、ななしは「ごめん」と謝る。眠い目を擦った。スッと騒がしい一角を見る。
「ところで、あれはなにをしているの? 儀式?」
「さぁ。ガロが、なんか勝手に始めたことなんだけれど」
「あー、アレ? 極東の島国で行われる『TSUKIMI』をやってるらしーよ。調べた資料とは全然違うけど」
「集められなかったのかな」
「じゃない? あの纏を持ってきたときも、かなり実際の物とは違ってたし」
「へぇ」
「多分、あれは自分で改良したんだろうねぇ。今となっちゃ、私が大幅に改造した部分が多いけど」
「そうなんだ。へぇ」
「まぁ、放っておいても大丈夫だと思うよ?」
 そう返して、休憩エリアの広いベッドに寝転がる。インスタのチェックを始めたアイナを余所に、ななしはエリアの端に寄る。柵に凭れかかると、一角で賑わう声を聞けた。「それを本当に飾るのか?」目を疑うといわんばかりに硬い声が、ガロに刺さる。そんなリオを振りほどくように「おう!」とガロは力強く叫んだ。「っつっても、雑草じゃねぇか」ゲーラが追い打ちをかける。「よくもまぁ、こんな雑草を見つけられたものだ」さらにメイスが追撃をかける。流石に二人から問い詰められて答えに詰まったのか、ガロは自棄を起こしたらしい。ギュッと目を瞑って「うるせぇ!」と二人に叫んだ。「いわれてるぞ」「にしたって、ボス」「こんな風習、聞いたことがありませんね」ジト目のリオに、ゲーラはたじろぐがメイスは反論する。「そりゃぁ、僕も聞いたことはないがなぁ」呆れつつも、ガロの肩を持つようだ。「人の信仰くらい、自由だろ?」「おい、リオ。これはフィクションじゃねぇよ。現実だ」「本当かぁ?」胸を張るガロに、リオは疑わしい目を向けた。どうやら、以前にも似たようなことがあったらしい。ななしはその事態に遭遇していないからわからない。勿論、ゲーラもメイスも見ていないからわからなかった。一様に首を傾げる。リオが組んだ腕を解いて、頭を抱えた。
「はぁ。それで? その団子の代わりが、揚げたドーナツだって?」
「おう。『OSONAEMONO』の代わりになるものは、あげる気持ちが籠っていれば充分って書いてあったからな!」
「悪魔召喚の儀式かよ」
「魔法陣は書かれていないみたいだがな」
「るっせぇ! 儀式じゃなくて、ジャパンのちゃんとした行事だっつーの!!」
(そうだっけ?)
 ななしは疑問に思う。少なくとも、月を見るだけの話だったはずだ。あとは、スーパーの商品やお遊戯会。その辺りである。ふぁ、と欠伸をする。柵に凭れかかりながら、一連の騒動を見た。


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