荒野猛暑(前日譚前)

 荒野の夏は暑い。ムワッと掻いた汗で服の中が蒸れる。ブワッと自前の炎で燃えてもダメだった。また暑さで汗を掻く。日陰の中が、唯一涼しい。「もう夜に動くしかないかなぁ」「じゃねぇのかぁ?」日陰で大の字に寝転がるサングラスが、なんかいってる。皆が皆、暑さでバテていた。ただ、ゲーラとメイスはギリギリ日向の方まで出ている。手で日陰を作って、空を見上げている。難しい顔をしたあと、こっちに近付いてきた。すっかり日陰の中に入る。
「クソッ。涼しくなる気配がねぇ」
「当分、この気候だな」
「というと、暑さで体力が消耗するってこと?」
「そうなる」
「俺たちはともかく、他の奴らがな」
 確かに。ゲーラやメイスは平気そうだけど、他のメンバーはダメそうだ。「ってことは、夜に移動するってこと?」「バレそうだよなぁ」「監視の目がなければ、行けるだろう」「あるっけ?」「普段は移動してねぇからな」「俺たちの炎は夜でも目立つ」それはそうだ。夜空の星より一番瞬く。明るい炎は、絶好の目印となった。
「もしくは徒歩で向かうとか?」
「バイクは俺たちの命だぜ?」
「隠密行動を考えれば、理に適ったやり方だが」
「風を感じれば涼しくなるんじゃねぇのか!?」
「それで全員バテたっつーことになってンだろ」
「お前の目は節穴か?」
「なんか俺に対する当たり、キツくね?」
「さぁ」
 よくわかんない、とだけ返す。ゲーラとメイスは二人で話を続ける。「コイツら全員のペースを考えると」「燃えればどうにかなるとはいえ、食料と水も」「やっぱ移動するしかねぇか?」「どこか目安があるといいんだが」色々と考えることがありそうである。(やっぱ、地図の入手が最優先かなぁ)地理的情報は一番大切だ。「一気に雨が降りゃぁいいのに」そう暑さにやられたサングラスの人がいってたけど、無視することにした。ゲーラもメイスもスルーしているから、スルーしても大丈夫だと思う。大きな独り言だ。「あぁ、くそぉ。夏の馬鹿やろぉ」なんて呻きながら寝転がった。「もう少し過ごしやすい気候になりゃいいものを」「過ごしにくい気候こそ、人が寄り付かんというものだろう」ゲーラとメイスはまだ話を続けている。方針は、まだ決まりそうになかった。


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