正午を過ぎたあたりのこと(消火後)

 小腹が空いた。歯を磨いたものの、顔を洗うまでは行かない。「ちゃんと洗え」と注意するメイスに「スキンケアが終わってからいってよ」とななしはいう。肌の手入れは大事だが、それにもやる気が要る。(手軽にサクッと高品質なのはできないのかな)とななしはずぼらなことを思う。実はジャパン正規の輸入店に行けば、買えることを知らない。キッチンに入り、キャビネットを開く。簡易な食事を採れる缶詰は、まだ三つあった。それを調理台に出し、お湯を沸かし始めた。沸騰するまで待つ。のろのろとリビングに戻り、ソファの様子を見た。長い足が食み出ているかと思えば、ゲーラである。広げた雑誌をアイマスクの代わりにして、惰眠を貪ってる。(ずるい)ななしも早く二度寝がしたかった。ソファの正面に周り、柳のように細い身体に凭れかかる。訂正、ダイブした。「ぐえっ!?」と寝ていたゲーラの腹から不気味な声が漏れた。垂れた腕が視界の雑誌を外す。衝撃の正体を見れば、ななしだった。「んだよ」と困ったように頭を掻く。それをスキンケア途中のメイスは、冷めた目で見ていた。
「んな起こし方をする必要はねぇだろ。ふぁーあ」
「寝てるのが、ちょっとイラッとして」
「んでだよ」
「二度寝したい」
 そういえば「あー、あーあ」とゲーラが納得する。理由を察して、ガリガリと頭を掻いた。メイスが冷たく一瞥し「気にしない人間は気にしないからな」と毒を吐いた。それにゲーラがムクリと起き上がる。背凭れに肘を乗せて、ソファ越しに相手を見た。「んだよ、それ」食いつくが、メイスは無視をする。腹に乗っていたななしはというと、足の方へズレ落ちていた。この位置を見て、ゲーラがおもむろに手を伸ばす。ななしの後頭部を掴むようにして触ると、パシッと手を叩かれた。
「んだよ」
「そういうのより、ご飯」
「だとよ。残念だったな」
「あー?」
 返事したメイスにゲーラは食いついてみせるが、それだけである。ゲーラの誘いを断ったななしは、床に落ちた雑誌に気付く。拾い上げれば、ゾンビ映画の特集だ。(ぞんび)少し馴染みがない。この種類を聞いて映画パーティーが始まるのは、もう少ししてからだった。


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