バーガーの客

 あっ。また来た。たまにセットで来たり、片方だけ来たりする。今回はセットで女連れだ。それぞれが女を侍らせてるわけではなく、女が一人挟まれている。ハッピーセットでいうところの、バーガーとドリンクオマケ付きってところだ。顔見知りか知り合いだからか、仲がいい。「あっ、新商品」と女の方がいう。天然パーマが少し入ってる癖毛の強い男が「他にもあるぜ」というし、ストレートヘアの男が「あれとかな」と相槌を打つ。仲良しか。いや仲良しだわ。カウンターに来たから、マニュアル通りの対応をする。
「期間限定のが気になる」
「じゃ、これにしようぜ」
「ポテトはLにするか」
「ドリンクは?」
「俺ぁコーラで」
「なら俺はスプライトにするか」
「ミルク!」
 あ、女の方が男二人にムニムニされている。癖毛の方が女の両頬を片手で挟んで、ストレートの方が鼻の下から差し込むように女の両頬を片手で挟んでいる。左右の手で作ったクチバシか? 目の前で手製のアヒルのクチバシを見せられても、困るんだが。カウンターのメニューを見ながら、ムニムニと揉み続ける。満足したのか、少しタイミングをズラして男二人が手を放した。上手く息もできなかったためか、女が「プハッ」と息を吐く。
「ならファンタグレープ」
「そうか」
「美味ぇもんな、ファンタ」
「うん。濃厚ふわとろの単品と、ファンタで」
「倍えびフィレオ」
「なら、俺がセットで頼むか。倍グラン・ガーリックペッパーセットのポテトLサイズ、スプライトで頼む」
「あ、ゲーラ。飲み物」
「ファンタグレープ、っとコーラだ」
 女の方に釣られていったな、今。とりあえず今きた注文を繰り返す。えーっと、濃厚ふわとろ月見バーガーのファンタグレープに、倍えびフィレオのコカ・コーラ。それと倍グラン・ガーリックペッパーセットのポテトのLとスプライト。ほい、了解。ついでにドリンクのサイズは特にいわれてないから、Mサイズで済ませちまえばいいだろう。そういえば、テイク・アウトかイート・インだかを聞くの忘れた。
「テイク・アウトで?」
「あっ」
「お持ち帰りだ」
「支払いは現金で頼む」
 既にストレートの方が現金を出していた。とはいえ、まだ受け取るわけにはいかない。商品を出してないからだ。
 いわれたものを用意し、単品バーガーを同じ袋に入れる。セットはセットで小分けだ。先にドリンクを渡し、その次に袋二つ。それらをカウンターに置いてから、現金をいただいた。ドル札を数枚、小銭はなし。レジに通して、お釣りの小銭を渡した。ストレートの男が無言で受け取る。癖毛の男を見て、女を見る。その手に袋があることを見てから、男が自分のドリンクを手に取った。
「ほら、貸せ。お前、零しちまうだろ」
「えっ。そんなことない」
「ばぁか。ドリンクの方だろ。既に蓋が開いちまってるぞ」
「あ、本当だ」
 パカッと音がしたのは、そっちか。女が男に袋を預け、ドリンクを直す。っつか、そのまま行ったぞ。男の方が。癖毛も遅れて歩き出す。女が先に行った男二人を見て「あ、待って」と声をかけた。ピクとも動かねぇ。あ、でも足を止めたな。一瞬だけ。気持ちゆっくり歩き出したぞ。アイツら。
「零れないの?」
「場数が違うんだよ」
「慣れたらできる。まっ、慣れることだな」
「ふぅん」
 そう会話をして、店を出て行った。


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